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ゆゆゆゆ
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「んぁ……」
僕は大きなあくびをした。
時刻は深夜二時過ぎ。
本当ならとっくに寝ている時間だ。
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でも。
今日はシクサーと通話していた。
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『眠そうだな』
「そんなことない……」
『いやあるだろ』
「ない……」
『今何回目のあくびだ』
「しらな……い……」
⸻
僕はベッドに転がった。
スマホ画面にはシクサーのアバター。
いつもの赤い角付き帽子。
いつもの黒い服。
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『寝ろよ』
「やだ」
『なんでだよ』
「まだ遊びたい」
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シクサーが少し黙った。
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『……明日もいるだろ』
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「うん」
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『じゃあ明日遊べ』
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「うん」
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『だから寝ろ』
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「やだ」
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『ガキか』
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「シクサーも起きてるじゃん」
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『俺は平気』
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「ずるい……」
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『何がだ』
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「声聞いてると眠くなる……」
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『それ悪口か?』
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「褒めてる……」
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『意味分かんねえ』
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僕は笑った。
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そして。
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そのまま。
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すぅ。
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『……おい』
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反応なし。
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『ヌーブ?』
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反応なし。
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『おーい』
⸻
反応なし。
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シクサーは画面を見つめた。
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完全に寝ていた。
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「……」
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数秒。
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『マジかよ』
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小さく笑う。
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画面の向こうでは、僕のアバターが安全地帯に放置されている。
ぴくりとも動かない。
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シクサーは少し考えた。
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本当に少しだけ。
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そして。
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『……』
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何かを思いついた顔をした。
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非常に嫌な予感がする。
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まず一個。
ハートエフェクト。
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ぽん。
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『……』
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もう一個。
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ぽん。
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さらに。
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ぽん。
ぽん。
ぽん。
ぽん。
⸻
『ふっ』
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笑っている。
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完全に楽しんでいる。
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気付けば。
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僕のアバターの周囲は、
大量のピンク色のハートで埋め尽くされていた。
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「好き好き好き好き好き好き」
みたいな空間になっている。
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『ははは』
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シクサーは肩を震わせた。
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さらに。
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『ここにも置くか』
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ぽん。
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『あ、そこも』
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ぽん。
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『完璧だろ』
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数十分後。
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僕のアバターは、
もはやハートの中心核になっていた。
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通りすがりのプレイヤーが見たら、
絶対に何かを勘違いする。
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『……』
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シクサーはその光景を見て満足したらしい。
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『おやすみ』
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小さく呟く。
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それから少しだけ。
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本当に少しだけ。
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僕のアバターの頭をぽんっと撫でた。
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『また明日な』
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そして通話が切れた。
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翌朝。
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僕は目を覚ました。
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「ふぁぁ……」
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ログインする。
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そして。
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固まった。
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「なにこれ」
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画面が。
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ピンクだった。
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見渡す限りピンク。
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ハート。
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ハート。
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ハート。
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どこ見てもハート。
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「ははははははは!!」
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僕は爆笑した。
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「なにこれぇ!!」
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スクリーンショットを撮る。
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すぐにシクサーへ送る。
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【犯人お前でしょ】
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数秒後。
返信。
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【知らねえ】
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【絶対お前】
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【証拠は?】
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【センスがシクサー】
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【なんだその証拠】
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【あと配置が無駄に綺麗】
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しばらく既読が付いたまま止まる。
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そして。
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【……褒めてんのか?】
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【半分くらい】
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【そうか】
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否定しなかった。
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犯人確定である。
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その後そのスクリーンショットは友達グループにも共有され、
全員から、
「告白現場じゃん」
「結婚式?」
「もう隠す気ないだろ」
と言われることになる。
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なおシクサーは最後まで、
「ただのイタズラだ」
と言い張っていた。
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誰一人信じなかったけれど。