テラーノベル
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「羅依」
「うん?」
羅依と二人で役所からマンションへ帰る車内で、すっかり髭なしが定着した彼の横顔を見る。
「お兄ちゃんとScenic Gemに行くっていう日がこんな日になるなんて…羅依は分かっていたんだよね?私は分かってなかったな…今とても驚いてる」
「俺も分かってはいなかった。才花のプロポーズは、完全に嬉しい想定外」
「そう?」
「小松さんに見せられるくらいまで踊るか…そうだな、そこは分かってなかった。でもヤンチャぶりが見られるくらいは想定内。小松さんにはきっと才花が踊る、とだけ伝えたら来てくれた」
「ヤンチャ、ヤンチャって…まあ、だから曲があったんだもんね」
「イギリスの…あそこまで才花が進んだから、小松さんに婚姻届に記名をお願いした」
「プロポーズ、待ってた方が良かったかなぁ…振り返ると、とんでもないことしたよね、私…」
「プロポーズまで俺好みだ」
「このリングは私好み」
私は左手薬指の指輪を眺める。
幅広シルバーリングに神秘的な輝きを放つブラックダイヤモンドが埋め込まれたシックな印象の指輪は、シンプルだがその幅のために存在感がある。
「で、踊りきれた感動と結婚の感動に浸る間もなく、お仕事って…これが一番想定外だよね」
「才花の引き寄せた光だな。これから俺とその光の中を歩いていくんだ、才花は」
私の手を握った彼の手をきゅっ……と握り返す。
「スポットライトを浴びるのとはまた違う光だね」
「一瞬の光でないからな。生きてる限り続く光だ」
車が静かにマンションの駐車場に止められると
「羅依、ありがとう」
ちゃんと伝えたいと思った。
「かなわないくらいの羅依の愛情を感じて、理解すると…私が初めてここに来た夜…あの時の羅依の気持ち…きゅって苦しくなるの。もうあの時には私は羅依の光に包まれていたのかもしれない…今はそう思う」
「そうか」
彼は静かに声を落とし、私の唇の端を親指で撫でる。
「でも羅依って羅って書くでしょ?」
私が右手の人差し指で羅依の手のひらに羅の文字を書くと、その手が引かれて抱きしめられる。
「羅って、網を張りめぐらすとか、網で捕らえるっていう意味があるんでしょ?だから捕まったのかな…とも思うの」
「俺好みを網羅したってところだ。俺の才花だろ?」
「そうだね。で、私の羅依だよ。私は聞かない。言いきっちゃう」
「それもめちゃくちゃ俺好み」
羅依は私の耳に口づけてから体を少し離すと
「藤堂才花を生涯愛し捕まえておくと誓う。覚悟しろ」
チュッ…一度のリップ音のあと深く深く口づけた。
[本編完結]
コメント
5件
本編完結おめでとうございます🤩⤴️ 続編?番外編?楽しみに待ってます~😆💕
本編完結お疲れさま&おめでとうございます✨ダンスという未知の世界の華やかだけではない、日々の地道な練習など、、、楽な道はない!!某アイドルではないですが、 努力は報われる✨✨✨ 才花ちゃんの願った世界一ではないけど、 King&Queen サイコ~に輝いてるよ❤️
本編完結おめでとうございます🍾🥂 最後まで俺好みで私好み、俺の才花だろ?には私の羅依!とってもクールで熱い2人はオバ好み🖤♥️指輪💍も全てがカッコいい🤩 才花ちゃんの『かなわないくらいの〜』がぐぐっと胸にきた。もうあの夜から羅依の光に包まれ網羅されてたんだよね🥹✨ これから始まる藤堂才花の光輝くステージを応援していきたいです✊🏻✨ まぁさん、本編完結ということは… 番外編ある⁉️続く⁉️:꒰՞˶⊙⊙՞꒱:💨💨 もう少しだけ、皆んなとお父さんにも会えますように…