テラーノベル
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Scene.22「時を護る結界」
フェイド――
空へと跳躍し、杖を高く掲げた瞬間。
その周囲に、淡い銀光の魔法陣がいくつも展開する。
フェイド:「《ラピス・リリス:時間の護り》」
──発動。
空間が反転するように広がり、
校舎や大地を包み込む巨大な魔法結界が展開された。
まるで花が咲くように、いくつもの層が広がるその結界は、
この戦いの余波から“皆を護るため”に作られた、超高等空間魔法。
リドル:「……あれは……結界……!? 見たことがない……!」
アズール(目を細め):「あれは……むかし、記録から消された魔導戦技と同質の……」
ジェイド:「……フェイド、完全に“目覚めた”のですね」
フロイド(小さく笑って):「へぇ、やっぱり本気のフェイドって面白いじゃん」
ユウ:「ネメシス……じゃ、なかった……本当に、フェイド……?」
グリム:「あのネメシスが……こんなすっごい魔法を……!?」
✦ オーバーブロット・マレウス
その上空、
黒と緑の光を纏い、まるで竜の影のような姿となったマレウスが、
不快げに結界に爪を立てる。
マレウス:「……“護る”? そのような魔法で何が救える……!」
ドォン!!
雷の奔流が結界に衝突する。
空間がぐらつき、何層もの結界が軋む音を立てて揺れた――
が、それでも。
フェイド:「……破れません。
この結界は、“私の大切な人々”を想って張ったものですから」
その声音に、恐れはなかった。
⸻
✦ 戦場、静かに定まる
結界の内部では、生徒たちと学園長が冷静に状況を把握し始めていた。
クロウリー(真剣な眼差し):「……もはや、彼を止められる者はフェイドしかいないようだ」
ジャミル(眉をひそめて):「あいつ……どんな訓練をすれば、あんな魔力が……」
ヴィル:「……もう、“ただの舞台”じゃないわね。これは」
レオナ:「クソ……俺はここまでか……」
アズール:「……フェイド。貴方の戦い方、最後まで見届けさせてもらおう」
結界が張られ、民は守られた。
ここからが、本当の意味での“一騎打ち”。
竜王と、大魔法師。
終わらせるために。
繋ぐために。
Scene.23「記録なき光、その輝き」
マレウスの咆哮が、空を突き破る。
怒りと孤独が渦を巻き、雷の刃が結界に降り注ぐそのとき――
フェイドは一歩前へ出て、そっと目を閉じた。
フェイド:「……これは、“戦い”ではありません。
あなたの心へ届く“対話”の一つです――《記録なき光(ノーン・エクリュ)》」
パァァァ――ッ……
周囲に、幾重にも重なる魔法陣が静かに展開されていく。
まるで光の花が咲くように、それは宙に浮かび、ゆっくりと回転し始める。
マレウス:「……何をするつもりだ」
その魔法は、攻撃ではなかった。
けれど、空間の性質が明確に変わっていく。
視界が滲む。
音が消える。
すべてが“映像”と“記憶”に染まりゆく。
これは――
世界に存在しないはずの、“もう一つの記憶”を顕現させる魔法。
✦ “記録なき光”が映すもの
次の瞬間、マレウスの目の前に現れたのは――
幼き頃の彼自身と、微笑む人々の幻。
・リリアの膝の上で眠る彼
・シルバーが笑顔で語りかける姿
・セベクが必死に後を追いかける記憶
・ディアソムニアの皆と過ごした、あの数々の温かな時間――
フェイド:「……あなたが、“忘れてしまった”もの。
“記録”にない、けれど確かに存在していた光を、私は再構築しました」
マレウス(オーバーブロット):「……これは、違う……これは、幻だ……!!」
フェイド:「ええ、“記録”には残っていません。
けれど、“あなたの心”に残っているはずです。
それが、この魔法の正体――」
《記録なき光》は、対話する魔法。
魔力ではなく、想いを媒体とする、フェイド唯一の“感情干渉魔法”。
それは、戦いの最中でさえ、
心に“届く可能性”を捨てない戦術。
⸻
✦ 周囲の反応
ユウ:「……あれ……マレウスが、泣いてる……?」
グリム:「本当だぞ……!」
ジェイド(小さく呟く):「あれが、フェイドの力……いや、“意志”ですか」
アズール:「……やはり、特別な存在だ。
ただの戦闘魔法ではない……想いを、“世界の理”として組み替える力……」
✦ マレウスの変化
「……僕は……こんな……時間を……」
マレウスの目に宿った“黒の炎”が、わずかに揺らぐ。
オーバーブロットの魔力が、わずかにだが“収束しはじめる”。
けれど――
その瞬間、彼の中で“異質な何か”が暴れだした。
「ダメだ……こんな……終わらせられない……
すべて……僕が閉じ込めなければ……!」
ドオォン――!!
暴走する感情が、もう一段階深い闇を引きずり出す。
《記録なき光》すらかき消すほどの、“絶対遮断空間”が生まれ始める!
Scene.24「沈黙の閃光」
空間に奔る、雷の咆哮。
《記録なき光》すらかき消されたその瞬間――
静かに息を吸い、目を閉じた。
フェイド:「……ごめんなさい、マレウス。
あなたの心に届くには、少しだけ時間が必要です」
フェイドが掲げる杖に、世界の理すら歪めるほどの魔力が集まり始める。
銀白と蒼の光が螺旋を描き、
空間が凍るように静まり返る。
マレウス:「……来い。“大魔法師”――」
咆哮が雷に変わる。
ドオォオオン!!!
全空間が黒緑の稲妻に染まった瞬間――
フェイド:「《アーク・ファタリス:永劫の審断》」
彼女が放ったその一撃は、
もはや“魔法”ではなく――
**“現象の改変”**とすら言えるものだった。
重力が消え、空間が圧縮され、
放たれた銀蒼の光が全てを包み、削り、穿つ。
マレウス:「ぐッ……!」
光が爆ぜる。
雷が割れる。
竜の咆哮が、悲鳴に変わる――!
✦ Scene.25「沈黙の果てに」
轟音の後、静寂。
空中に漂う残光の中、
オーバーブロットの姿が、煙のように崩れていく。
マレウスは、体勢を崩しながらもまだ意識を保っていた。
けれど、力はもう残っていない。
音もなく着地し、すぐに駆け寄った。
フェイド:「――まだ、終わりではありません。
ここからが、本当の“対話”です」
マレウス:「……お前は、なぜそこまで……」
彼の瞳には、もう怒りも、闇も、ない。
あるのはただ――疲れ果てた、青年の目だった。
✦ 周囲の反応
クロウリー:「……あれが、“本気のフェイド”ですか……」
ジェイド(やや目を細め):「まったく。お見事ですね」
アズール:「もはや、彼女に隠し事は通じませんね……」
グリム:「す、すっげぇ……! なんだよ、あの光……! まるで星が落ちてきたみたいだったぞ!」
ユウ:「……ネメシス、じゃない。フェイド、すごいよ……」
Scene.26「弱さを知る者同士」
光が消え、空間が静まり返る。
その中央に、静かに膝をついたマレウス。
そして――彼の前に立つ、杖を静かに地面に下ろす。
フェイド:「……あなたの気持ち、痛いほどにわかります」
マレウス:「……?」
フェイド:「理解されないこと、何もかも背負ってしまったこと、
力があるがゆえに“正しさ”を求められて、でも……誰も、手を差し伸べてくれないこと」
ほんの少し――かすかに声を震わせて言葉を紡いだ。
フェイド:「私も、怖いんです。
誰かを傷つけてしまうこと、自分の存在が世界から外れてしまうこと。
この力が、誰かを遠ざけることが――」
マレウスは、静かに顔を上げた。
フェイド:「でも、それでも私は、
“共に歩いてくれる人”に出会えたから、今の私があります」
ユウ、グリム、エース、デュース――
そして、リーチ兄弟、アズール、学園のみんな。
それは、フェイドにとって“恐れを越える勇気”をくれた存在たち。
マレウス:「……共に……歩く……?」
フェイド:「ええ。あなたの側にも、きっといます。
リリアさん、シルバーくん、セベクくん……あなたの時間を大切に思っている人たちが」
フェイドはそっと手を差し出す。
フェイド:「だから、もう“ひとり”で苦しまなくていい。
“強くあろう”としなくても――私が、いますから」
――その手を、マレウスは、ゆっくりと。
マレウス:「……お前の言葉は、光だ。
かつて見失った時間を……もう一度、歩く気にさせてくれる」
その指先が、そっと触れた瞬間――
黒い霧が、すぅっと消えていく。
《オーバーブロット、解除》
✦ Scene.27「夜明けの空」
結界が静かに解かれ、
朝日が空に昇り始める。
どこか遠くで、鳥が鳴いた。
マレウスは、静かに立ち上がり――深く、頭を下げる。
マレウス:「僕が見失っていた“心の形”を、君が思い出させてくれた」
フェイド(静かに微笑んで):「……少しでも、伝わったなら。私は、それだけで」
✦ 学園長の声が響く
クロウリー:「――では、これにて。
この“記録なき戦い”は、完全終結としましょう!」
わあああああっ!!!
歓声と共に、生徒たちが駆け寄る。
ユウが、グリムが、真っ先にフェイドへ飛び込んでくる。
ユウ:「ネメシス! ……ううん、フェイド! 無事でよかった……!」
グリム:「おまえってやつはぁぁあああああ! ぜーんぶ隠してたんだな!?」
アズール(苦笑しながら):「これからしばらく、“質問攻め”は免れないでしょうね」
ジェイド:「でも……フェイドらしい“終わらせ方”でした」
フロイド(ニィっと笑って):「なーんだ、やっぱフェイドって面白い~♪」
物語は、静かに一区切りを迎えた。
けれど――
まだ、終わりではない。
世界は、動き続ける。
それぞれの寮に、それぞれの時間があり、物語がある。
そして、君の物語も。
舞台は、戦いの翌日。
ナイトレイブンカレッジは、奇跡的にも再建可能な状態で残されていた。
けれど、あの“戦い”は――すでに、皆の記憶と心に、強く刻まれている。
そして今や、
“ネメシス”として過ごしていた生徒が――
「フェイド・リーチ」としてその名を知られることとなったのだ。
◇オンボロ寮・朝の光
朝日が差し込むオンボロ寮。
フェイドは、窓際で髪を後ろで束ねながら、ゆっくりと呼吸を整えていた。
すでに隠す理由は、なくなった。
けれど、それでも彼女は、朝の身支度を丁寧に整える。
仮面のような微笑は、今日も変わらない。
そこへ――
ユウ:「おーい、フェイドー!……って、なんかまだ変な感じするな」
グリム:「ネメシスじゃなかったなんて、まーだ信じられねぇぞ……! でもおまえ、めちゃくちゃかっこよかったんだぞっ!」
フェイド(微笑んで):「……ありがとうございます。
ですが、今まで偽っていたこと、お二人には本当に申し訳なく思っています」
ユウ:「……でも、命張って守ってくれた。
それが“全部”だよ」
グリム:「そうだそうだ! それにおまえ、料理も掃除も完璧だし、優しいし強いし! ずるいぞ!」
フェイド:「ふふ、褒めすぎです」
◇学園・昼休み
教室の廊下を歩けば、誰もが振り返る。
昨日まで“無口で目立たなかった一年”だった“ネメシス”が、
今や“伝説の大魔法師”として一躍注目の的に。
エース:「なあ、もう“ネメシス”って呼んだらダメなのか?」
デュース:「ネメ……いや、フェイド……さん? ううっ、呼び方になれない……!」
フェイド(ふわりと微笑んで):「今まで通りで構いませんよ。
……私は皆さんの同級生であることに、変わりありませんから」
エース:「じゃ、しばらくネメシスでもいっか。まだなんかそっちのがしっくりくるし」
デュース:「……優しいんだな、フェイドは」
フェイド(静かに頷いて):「いえ。ただ、皆さんが“私を受け入れてくれた”ことが、何よりも……嬉しかったのです」
⸻
◇リーチ兄弟との夜の語らい
夜の海辺。
月光に照らされながら、三人の影が並ぶ。
ジェイド:「……お疲れさまでした、フェイド」
フロイド:「よく隠し通してたじゃ~ん、ふふっ。でも、バレてからの暴れっぷり、最高だったよ?」
フェイド:「……お二人には、いつも支えられてばかりです。改めて、ありがとう」
ジェイド(穏やかな笑みで):「礼には及びませんよ。家族ですから」
フロイド:「そそ。兄妹ってやつは、こーゆーときくらい役に立たなきゃねぇ」
フェイド:「……これから、また平和な日々が続くといいですね」
ジェイド:「――ええ。
ですが、フェイド。
貴女が表に出たということは、それだけ“大きな波”を呼ぶ可能性もあります」
フェイド(目を伏せながら):「……そのときは、また。お二人と、ユウと、皆さんと一緒に乗り越えていきます」
✦ 小さな日常の再出発
その日の夜。
オンボロ寮では、変わらず騒がしくも温かな食卓が囲まれていた。
ユウ:「今日の夕飯はカレーでいい?」
グリム:「たっぷり肉入れてくれよなー!」
フェイド:「では、仕込みは私が引き受けましょう。……少々、お待ちください」
ほんの数日前まで、誰も知らなかった“フェイド”の名。
けれど今、
その名前は、“特別な誰か”としてではなく――
“かけがえのない仲間”として、皆の心に在る。
✦ End of Epilogue
“正体が明かされても、日常は続いていく”
仮面が落ちても、絆は変わらない
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