だけど、ホッとした自分もいる。
恋人同士じゃないのに、この前みたいなことは、やっぱりまだイケナイって思うから。
悠人……
名前までカッコよくて、こんな完璧な人って、本当にいるんだなって思う。
この1週間、私、夢を見てるような気分だった。
あれから、美咲にいろいろ聞かれて、親友だから全部話したけど、それでもまだ現実じゃないみたいで。
美咲は、私達のことをすごく喜んでくれて、そのまま付き合って結婚すればいいなんて、ひとごとみたいに言ってた。
美咲みたいに可愛いければ、私だって1歩踏み出したい。だけど、こんな地味な女、先輩……悠人が本当に受け入れてくれるのかって、ずっと不安が消えなかった。
臆病過ぎるって、美咲にも怒られた。
だけど、相手が相手だから余計に怖いのかな。月城グループの御曹司なんて肩書きがなければ、もう少し……気楽にいられたの?
肩書きもそうだけど、それよりも、外見も中身も悠人と自分が釣り合わないから、だからきっと、捨てられるのがオチだってマイナスに考えてしまったり。
本当に……情けない程、自分の中にいろんな思いが混在してる。
悠人との生活、これからどうなるのか?
とにかく、今は冷静にならないと……って、自分に言い聞かせた。
「食事しよう」
お互い、さっきのことは無かったみたいにリビングのソファに座った。
ワイングラスが2つ。
悠人がワインを注いでくれて、乾杯した。
目の前にあるオードブルが綺麗で、リビングの大きな窓からは、都会のキラキラした幻想的な夜景が楽しめた。
こんなリッチな生活、私にとっては何もかもが初めての経験で、不思議な感覚だった。1週間前に同窓会で出会った2人が一緒に暮らしてるなんて、想像もできない未来にまだまだ戸惑いは隠せなかった。
悠人は赤ワインを飲みながら、仕事のこと、プライベートなこと、ゆっくりといろいろ語ってくれた。
勉強になる興味深い話ばかり。
愚痴や嫌味、人の悪口を言わないから聞いてて心地よい。あからさまな自慢話もしないし、自分のことだけを話すんじゃなく、私にもちゃんと話をふってくれた。そして、ふった話は最後までキチンと聞いてくれた。
こういうところにカリスマ美容師としての大きな資質を感じた。人を飽きさせないお喋りと知識量。もちろん、押し付けじゃなく自然だ。
昨日の悠人のカットの技術も半端なかった。
おまけに超イケメンで、オシャレでスタイルも良い。
お客様からの指名がつくのも簡単にうなづける、文句のつけようがない最高のトップスタイリストだ。
情けないけど、私とはランクが違い過ぎる。
でも、だからこそ、悠人のお店で頑張って、1人前のスタイリストになりたいって、だんだん前向きな気持ちが湧いてきた。
悠人って……本当にすごい。
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