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「……」
待っててと言われたが本当にここに居ていいんだろうか。逃げるなら今のうちかもしれない。
ただ任務が完了しないまま帰る訳にもいかないし、逃げたとしてどこに行けばいいか分からない。後を追われて殺される可能性だってある。
初めて外に出たし、この辺の隠れられる場所なんて知らない。
ふと自分の腕を見る。点滴の針が刺さっている。体に異常は無いし、毒が入っていることはなさそうだ。
点滴針が刺さっている腕にはもう見慣れてしまった。貧血や栄養失調で倒れることが多いからだ。食事は3日に一度与えられるか与えられないかくらい。しかも質素なパンと少しのサラダ。
そんな状態で厳しい訓練に耐えられるはずなく、他の子達もどんどん倒れていった。
比較的俺は耐えられた方だろう。それでも何度か医務室行きになったが。そうなると必ず怒鳴られる。耐性がないだの使えないだの、とことん叱られた後、手加減無しに暴力を振るわれる。それが俺達にとっては普通だった。
辛いとか苦しいとか、そんなのは無い。
いや、諦めたと言う方が正しいだろう。そう感じることが無駄なのだ。
そんな思いがあればこの生活に耐えられない。さっさと諦めてしまった方が楽だ。
この世に生まれてからずっとその生活をしてきた、というのならまず「辛い」や「苦しい」などの感情は生まれない。だが組織で訓練されている者は違う。”連れられて来た”のだ。
一度、「幸せ」を知ってしまった。それも幼い頃の記憶で、確実に在るのに曖昧な、そんな記憶。
普通の家庭に生まれて、両親からたくさんの愛を貰って、幸せな人生を送るはずだったのに。
明るい世界で皆と同じような生活がしたかっただけなのに。
どうして俺は、俺達はそれが許されなかったのだろう。
組織には、死んだ方がマシだと言って自害した子も居た。
だけど、その子の死体を見る大人達の目は酷く冷たく、嘲笑うような目だった。
次は俺がああなるかもしれない、あの目で見下されるかもしれない、そう思うと怖かった。
死んでも逃げ切れない。奴らはどこまでも着いてきて俺を監視している。あの組織に関わってしまった時点でもう手遅れなのだ。
後戻り出来ないなら進むしかない。止まってしまえば前も塞がれる。
選択肢も拒否権も無い。
俺はこの先、一生こんな生き方をしていくのだろうか…
そんな思考の海に沈んでいたが、ガラスの割れる音で引き戻された。
ガシャーン!!
飛び散るガラスの破片がまだ空中で舞っている間に、1人の青年が窓から入り込んできた。
「こんちゃっちゃ!」
コメント
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山の中で生まれてきたか?
こんちゃっちゃって、窓ガラス割ってくる方がこぇーよ!
続き待ってます