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第三話「五人目の名前」
「……どうか、俺を殺さないでください」
その言葉が落ちた瞬間、戦場が静まり返った。
神代蓮は、自分の耳を疑った。
「……零王が……謝った?」
天城迅も動けない。
あの夜凪零王が、誰かに怯えている。
しかも相手は――黒瀬朔。
普段なら教室の隅で静かに本を読んでいる、あの朔だ。
「お前……何者なんだ」
蓮が震える声で尋ねる。
朔は蓮を見る。
「僕?」
一瞬だけ、困ったように笑った。
「僕は――」
その瞬間。
「逃げろ!!」
零王が叫んだ。
「え?」
「そいつから離れろ!! 今すぐに!!」
だが遅かった。
朔の背後に、黒い亀裂が走る。
そこから無数の黒い腕が伸びてくる。
「な、なんだこれ!?」
蓮が剣を構える。
しかし朔は動かない。
「……そうか」
朔が小さく呟いた。
「まだ残ってたんだ」
零王が顔を青ざめさせる。
「違う……!」
「何が?」
「俺が封じたはずだ……!」
朔が首を傾げる。
「封じた?」
そして――笑った。
「違うよ」
「俺は、封じられてたんじゃない」
黒い亀裂が一斉に砕け散る。
「俺が、閉じ込めていただけだ」
轟音。
建物の壁が吹き飛ぶ。
空が黒く染まる。
蓮は必死に目を開ける。
その向こうに立っていたのは、黒瀬朔。
だが、いつもの朔とは完全に違う。
「……名前」
白峰澪が呟いた。
「あなたの名前は……?」
朔は澪を見る。
しばらく黙ったあと――
「名前なんて、必要なかったんだ」
「……え?」
「零は判断するため」
「焔は戦うため」
「凪は守るため」
「そして朔は――人間でいるため」
そこで朔は自分の胸に手を当てる。
「じゃあ、俺は?」
静かな笑顔。
「全部を終わらせるためにいる」
その瞬間。
夜凪零王が叫んだ。
「――来るぞ!!」
空から巨大な光が落ちてくる。
零王が全力で防御する。
「ぐっ……!」
それでも止められない。
蓮が叫ぶ。
「零王!?」
「俺一人では無理だ!!」
初めて聞いた。
あの零王の――助けを求める声。
朔は空を見上げる。
そして一歩、前へ出た。
「……じゃあ」
右手を上げる。
「俺がやる」
指を鳴らす。
――パチン。
世界から音が消えた。
光も。
炎も。
風も。
時間すら止まったようだった。
そして朔が、静かに呟く。
「消えろ」
巨大な光が――
跡形もなく消滅した。
誰も言葉を発せない。
朔は振り返る。
「……これで終わり」
しかし。
「――まだだ」
零王が立ち上がった。
血だらけになりながら、それでも笑っている。
「ようやく会えたんだ」
零王の目に、狂気が戻る。
「五人目の王」
朔の笑顔が消えた。
「……そう呼ばれるのは嫌いなんだ」
「ならば――」
零王が構える。
「名前を教えろ」
数秒の沈黙。
そして五人目は、初めて自分の名前を口にした。
「――黒瀬 終(くろせ・しゅう)」
その瞬間。
世界中の異能者が、同時に気づいた。
――何かが、目を覚ました。
そしてその日から。
「黒瀬朔」という少年を巡る、五人の王の物語が始まった。
コメント
1件
うわああああ!!第3話めっちゃ熱かったよ😭💕💕 朔くんの正体がまさかの“閉じ込めてた側”だったの衝撃的すぎる〜!! 「俺がやる」「消えろ」の流れ、鳥肌立ったよ…もう完全に推し確定!! 零王が助けを求める声も初めて聞けたし、この5人の王の物語、完全に沼だわ…次話が待ちきれない🌸
エルル様
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