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桜に案内されてジンは母屋の松吉の部屋へと向かった、廊下を歩くたびに古い板が微かに軋み、潮風に磨かれた柱が夕暮れの橙色を静かに吸い込んでいる・・・
旅館の庭を抜けて、敷地の奥へと進めば、進むほど、外の喧騒が遠ざかり、潮と緑の匂いが濃くなった
桜達の住居の母屋の一番手前の渡り廊下を歩き、手前の襖を桜がそっと引くと、布団に横たわった松吉が目を開けてジンを見た
その横には米吉も座っていた、松吉の顔色は少し戻り、呼吸も落ち着いている
「お義父さん、大丈夫ですか?」
「おお!!婿殿か・・・!」
「パンさん~~~~!」
米吉がジンを見るなり飛びついた、松吉もあわてて布団から出て、ゆっくりと体を起こそうとする
「ああっ、お義父さん!横になっていてください」
「いやいや、もう大丈夫じゃ、帰ってきてからずっと安静にしていたからの、明日には普段通りになるじゃろう」
ホッと張り詰めていたものがジンの体の中で安堵に溶けた
「そうですか・・・それは、よかったです」
「本当に・・・ジンさんのおかげです」
横にいる桜がまた涙ぐんでジンの手を握った、二人は熱く見つめ合った、よく見ると先ほどのキスで彼女の唇はすっかりリップが落ちている・・・もしかしたらそのリップは・・・あとで鏡を見てみよう、自分の唇は今赤いのかもしれない
桜の涙で潤んだ瞳は、ジンへの感謝の想いと興奮で煌めいていた、途端に心臓がドキドキし出す
―後少ししてお義父さんを見舞ったら・・・彼女を部屋に連れて行って、あの温泉ロビーでの続きをしたい―
そう考えた途端、ジンの体中のリズムがおかしくなった、胸の中で心臓と肺が苦しそうに暴れている
その時、松吉にがしっと両手を握られて、途端にジンの官能の妄想がパンッと風船が弾けるように消えた
「ジンさん・・・あんたは・・・命の恩人じゃ」
「ええ?い、いえ、そんな・・・」
グスッ
「本当に、桜の婿がアンタで良かった・・・良かったよ」
松吉の目には、深い感謝の色が浮かんでいた
「松吉は子供の頃に海で溺れかけてな、それ以来、水が怖くてしょうがないんじゃ~船には乗れるが、あれほどライフジャケットを付けろと言ったのに、ああっ!息子を亡くさんで本当によかったぁ~」
米吉もグスグス泣く
「そうだったんですか・・・」
それであの時、異様に怖がっていたのか・・・ジンはあの時松吉にしがみつかれて溺れそうになったのを思い出した、塩辛い水が鼻に入り込み、今でも鼻を啜ると少しおかしい
コメント
1件
パンさん頂きました😁🤭 松吉さん米吉さん、どうか婿殿の絶体絶命の大ピンチを救ってあげてください😣🙏