テラーノベル
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今、見てきた景色は杜若様達をはじめ、色んな方々が妖から帝都を守ってくれて、尽力して下さったから、成り立っている光景なのだ。
私はこれから先、妖のことも。おざなりにしていたアレ──『|白面金毛九尾《はくめんこんもうきゅうび》の狐』のことや十年前のことも。
しっかりと向き合わないと行けない気がした。
きっと、いろんなことを知らねばならない。
そう言った積み重ねが、私の夢の近道にもなるはずだ。
杜若様がもう少しで家に着くと教えてくれた、その横顔に伝える。
「杜若様。帝都を守って下さってありがとうございます。私、ほんの少しでも、杜若様のお力になれるように頑張ります。お話し出来ることはお話をします。だから……喫茶店に行くのを楽しみにしてもいいですか?」
そう言うと、杜若様はこくりと首を縦に振って微笑んだのだった。
※※※
その後、到着したお屋敷は広すぎて良く分からなかった。
場所的には街の中心街を少し離れた、山裾に近い場所。そしての後ろの山一帯も杜若家の土地らしい。
雪華の家ですら広いと思っていたのに、視界に入り切らない杜若様の家に目が点になってしまった。
杜若家は家というか、まずは目に飛び込んで来たのが博物館のような洋館。
ここが杜若一族の詰め所。妖を祓う本部隊。人がひっきりなしに出入りしていたけど、杜若様を見ると皆様、ビシッと敬礼されていた。
杜若様の後ろを歩く私にすら皆様、挨拶をして下さった。
私はただギクシャクと会釈をして。杜若様の後ろをおっかなびっくり、着いて行くだけ。
この敷地の奥にある日本家屋が、杜若様が住む本邸だとか言われたけども──この広大な敷地内にいる人達。全員。
黒の隊服を着こなしている皆様は、何かしら祓う力がある人達なのだろう。
それは言い換えれば、九尾と相反対する皆様達にほかならない。
こんな中で、九尾だと気付かれる訳には行かないと、背中に冷たい汗が流れる。
そこから生きた心地はしなくて。
敵陣の中、丸裸で歩いているような感覚だった。
そうして案内されたのは日本庭園、池まである立派な日本家屋の前に着いた。
ここが本邸だとか。
全体的にどっしりとしたお宿みたいな家。松ノ木と黒い屋根瓦やガラス窓が美しい。
表門から庭と池を突っ切り、杜若様がピタリと足を止めた。じゃりっと玉砂利の小気味良い音がする。
そして杜若様が、指差した場所に小振りな離れが見えた。
「あの部屋が今日から環の部屋だ。もとは茶室だったものを改装した。中には当面の生活必需品を用意している。事前に女中達に見繕って貰ったものだから、不備があれば言ってくれ。そうそう、部屋には風呂も付いている」
「私の部屋に、お風呂まであるなんて」
至れり尽せりでは。
雪華家では残り湯を貰ったり、たらいに湯を張って体を拭いたりするのが普通だった。
なので、お風呂と言う贅沢なものに心がときめく。
本当にありがとうございますと、言おうとするとじゃりと、後ろから誰か近づく気配がした。
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