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駿と梓が去ったロビー。
「まったく!あなた達は!」つかさはため息をつきながら腕を組む。
「いいじゃん!せっかく会えたんだから!そんなに目くじら立てない!」沙月はつかさの肩を揉みながら言う。
「でもね?すぐにホテルをススメるのはどうかと思うわよ?物事には順序ってもんが」
「多分・・ホテル行かないと思うよ?」
つかさの言葉を遮るように聖奈が口を開く。
「え?」つかさは目を見開いて驚く。
「だってあの駿くんだよ?再会したその日のうちにホテルに直行なんて、そんな真似できないよ!再会してすぐにホテルなんて・・あはは!とか言ってるよ!どうせ」
聖奈は駿を嘲笑うかのように言う。
「そういう事か・・まぁ、確かにそうね!」
つかさも聖奈同様に笑みをこぼす。
「でもつかさ先生も辛かったでしょ?ずっと梓に黙ったままで!」
「そうよ!まったく・・皆川先生は嫌な役をやらせるもんよね・・でもなんか肩の荷が降りた感じがするわ」沙月の問いかけに、つかさは安心したように微笑む。
「ならつかさ先生?お疲れ様って事で飲みに行きませんか?3人で!」
聖奈が提案するが「何バカな事言ってんのよ!皆川先生と金森さんなら別に良いけど、私は現職の教師よ?簡単に抜け出せないわよ!」
つかさがその提案を一掃する。
「だよね・・・」沙月ががっかりしたように肩を落とす。
「ならこうしない?」聖奈が何かを企んでいるように、不適な笑みを浮かべる。
「なんか企んでる顔ね?」
「いいから!ちょっと!」聖奈が小声で皆に作戦を伝える。
黄藤の間に戻り、テーブルで食事を取る聖奈、沙月、つかさ。
「準備はいい?いくよ?」聖奈が皆に呼びかけ、沙月とつかさがうなずく。
すると聖奈はおもむろに立ち上がり「う・・うぅ・・・」聖奈はお腹を押さえて、その場にうずくまる。
「ア、秋根サン?ド、ドウカシタノ?」
うずくまる聖奈につかさが駆け寄る。
「お、お腹が急に・・これまずいかも・・」
「大変!やばいよ!つかさ先生!聖奈・・今朝から具合悪かったから!はやく聖奈を病気に連れてかなきゃ!危ないよ!」
「ソ、ソウネ!ア、秋根サンヲ、急イデビョーインニ!」
「どうかされましたか?雛形先生?」
同じ学年の担任教師が近づいて来る。
「ア、秋根サンガ、フクツーヲ訴エテルンデス!私・・秋根サンヲ、ビョーインニ連レテ行キマス!」
「わかりました!では秋根さんをよろしくお願いします!」
「ハ、ハイ!ワカリマシタ!ソレト、私ハ、秋根サンヲビョーインニ連レテ行ッタラ、ソノママ直帰シマスネ?」
「わかりました!それで構いません!よろしくお願いします!」
「つかさ先生?私も一緒に行くよ!聖奈が心配だから!」
「ア、アリガトー、椎名サン!」
そう言うとつかさと沙月は、皆に見守られながら、2人がかりで聖奈を抱き抱え、ロビーを出て物陰に隠れる。
「ふぅー!バッチリだったわね!うん!バッチリ!バッチリ!」
つかさは安心したように、額に滲んだ汗をハンカチで拭う。
「いや、全然バッチリじゃないし!つかさ先生!演技下手すぎ!何でカタコトなのよ!」
聖奈はつかさのあまりの大根っぷりに文句を言う。
「ホントそれ!バレないかってヒヤヒヤしたよ!あれささすがに無いわ!」
「しょ、しょうがないでしょ?演技なんてなった事無いんだから!あれで精一杯よ!」
つかさは顔を赤くしながら怒りを露わにする。
「まぁ、でもこうやって、抜け出せたわけだし!結果オーライじゃん!」
聖奈はつかさの肩をポンと叩く。
「ならタクシーにでも乗って飲みに行きますか!で、頃合いを見て、ただの食べ過ぎだったって、報告する!これでOK!なら行こう!」
沙月の先導で聖奈とつかさはタクシーに乗り込む。
その頃、梓は駿の運転する車に乗り、当てもなくドライブをしていた。
しかし、互いに3年ぶりの再会だと言う事もあり、どう会話を切り出して良いか分からず、沈黙が続いていた。
「ねぇ?駿?これどこ向かってるの?」静寂を切り裂くように梓が駿に尋ねる。
「いやぁ〜どこに向かってんだろーなぁ・・あはは」駿は苦笑いをする。
「やっぱホテル?」
「あ、いや、それは、その、なんていうか、やっぱあれだし、いやでも、あれだし、うーん」
駿は顔を赤くしてしどろもどろな返しをする。
「え?行かないの?ねぇ?駿ったら」
梓は思わせぶりな顔で、ゆっくりとスカートの裾をあげていく。
「バ、バカ!な、何やってんだよ!」
駿は左手で、梓のスカートの裾を下げる。
「だって私・・3年も待ったんだよ?駿言ったよね?エ○チは私が高校卒業してからだって!私・・卒業してるよ?」
梓は顔を赤くしながら、駿を見つめる。
駿は黙ったままブレーキをかけて、車を路肩に停車させる。
「正直言うと・・そりゃ梓としたいよ・・梓の事は好きだし・・これからもずっと一緒に居たいって思ってる」
「駿・・・」梓は駿の顔を見つめる。
「でも・・再会してスグにするってのはどうなのかな?って気持ちもある・・けど・・俺の自己満のために3年も待たせた梓を更に待たせるのか?って気持ちもあって・・正直どれが正解なのか分からなくて・・・」
「きゃはは!やっぱ駿変わってない!」
「え?」駿は驚いたように梓の顔を見る。
「私が好きになった駿のまま!変わってない!安心した!」梓は助手席から身を乗り出して、駿に抱きつく。
「梓・・なんかごめんな・・こう言う時・・黙って俺について来い!って言えたらいいんだけど・・」
「私が好きになった駿は、臆病で泣き虫で優柔不断」「おい!」
「ちょっとだけ束縛っ気があって可愛い!でもいざとなったら、人のために自分を犠牲にできる優しくてかっこいい人!私はそんな駿だから好きになったの!」
「梓・・」駿の目に涙が浮かぶ。
「黙って俺について来いなんて、駿には似合わない!駿は手を繋いで一緒に行こう!って言うのが似合ってる」
「それ褒めてるのか?」駿はバカにされたような気になり、不貞腐れる。
「褒めてるよ!少なくとも私は駿がこの世の中で、いっちばんカッコよくて、弱虫な私だけのヒーローだって思ってるよ❤︎」
「弱虫なヒーローか・・ちょっとカッコ悪い感じが・・何とも俺らしいな・・あはは」
駿は恥ずかしそうに涙を拭う。
「駿❤︎だぁー好き❤︎」「俺もだよ梓・・愛してる」
駿と梓は抱き合って口づけをする。