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wki × fjsw
今日は、やんないよ。と到底嫌そうじゃない真っ赤な顔で言われ、俺はフリーズした。
仕事終わりの深夜、タクシーで当たり前のように涼ちゃん家で降りて、夕飯食べて、お風呂に入って。
んで先にお風呂から上がってヘアケアとかスキンケアを終えてソファでくつろぐ涼ちゃんの横に勢いよく飛び込んで、耳にキスした。
びっくりした顔で耳を押さえてこっちを見た涼ちゃんが、すぐに真っ赤になって顔を逸らしたから一瞬でムラっとして。
「なにそれ、かわいすぎだろさすがに」
思わず呟いた俺の言葉。
「っちょ、待っ…」
待ってとは言わせず、顎に手を添えてこっちを向かせてキスをする。
頑なに開かない唇の攻略法は習得済み。耳を弄ればすぐに割れる。
「う、ぅ…んんッ」
決して高い声じゃないけど、艶っぽい喘ぐような声。ほんと、それは俺を馬鹿にさせるから困る。
(まあ、俺のせいで喘いでるんだけど)
誰に対してか分からない優越感に浸る所までがセットだ。
そのまま何度も角度を変えて口付けて、歯列を舌で弄り倒して、逃げ惑う彼の舌を吸う。
「んぅ、っんーーーッ」
舌を無理やり絡めて引っ張ると、壊れかけの玩具みたいにびくんびくんと震えるのが、ほんと好き。
耳から首筋を指で辿って撫でる。
最初は抵抗するみたいにこっちの肩を押していた手は、すぐに震えて力を失う。パジャマ代わりのTシャツにシワが寄る。この縋りつかれてる感じがなんとも言えない。
甘ったるい痺れにぐずぐずになっていく涼ちゃんを見るのはすごく気持ちがいい。自分がそうさせているんだと思うと尚更。
体勢を崩していって、ソファの上に倒れた涼ちゃんにのしかかる形になって、ようやく唇を離した。
「っは、はぁ…っ、は」
肩で大きく呼吸をする涼ちゃんの、シャツのボタンを器用に外して肌蹴させる。
風呂上がりだからって言うのもあるけど、羞恥で上気した肌が扇情的。
その肌を一部見ただけなのに、グッと熱が上がって、熱くて暑くてTシャツを脱いだ。
そんな俺を見上げた赤くなった目元。視線を泳ぐように外し、目を伏せる。
「んぁ、ね…っひ、ろと」
まだ整わない呼吸の合間、訴えるように名前を呼ばれる。
そこで伏せた目を開き、こっちを見上げて言った。
「今日は、やんない、よ」
と。
えっ、この体勢で?
その顔で?
目をうるうるさせて目尻から頬から首筋から真っ赤にさせて、薄ら開いた唇から覗く舌が震えている。
声だって上擦ってて、少し舌足らずになってて、俺の名前呼ぶのだって強請るような感じだったのに?
その顔で?その姿で?その声で?嘘でしょ。
「なんで?」
多分、すごく怪訝な顔してると思う。
うっ、と言葉に詰まって涼ちゃんがまたまた視線を逸らす。
こんなふうによく分からない感じで拒否される事はほとんどない。大体涼ちゃんがしないと言う時はなにか理由がある。
耳元に顔を寄せて
「ねえ、なんかあんの?」
吐息と一緒に囁く。
「……っっ」
ギュッと肩を竦めて目を閉じる。怒られる寸前の子どもみたいだ。
これは押せばいけるんじゃ?と思ったところで、小さく涼ちゃんがなにか呟いた。
「え、なに?」
「もとき」
待ってよ。その顔とその姿で、舌っ足らずに親友の名前呟かれるのはつらい。
なんて、余計な感情が一瞬ざっと心に舞い込んできたけれど、すぐに追い出す。
「元貴が、なに?」
「……ょう、言われた、じゃん」
言われた?なんだっけ?
今日は、スタジオで打ち合わせとか衣装の採寸とかそういうのだった気がする。
(あー…なんか、あったな)
徐々に記憶が掘り起こされていく。
次のイベントだかなんかのコンセプトに合わせた衣装についてに打ち合わせ。
元貴が、若井これどうかなー。ってジャケットみたいなの寄越してきてタンクトップの上に羽織ろうと上着を脱いだ。羽織ると色はいいけどサイズが少し大きい。
『若井さんって束縛されても平気なタイプですかぁ?』
後ろに立って採寸をしていた衣装担当の男性スタッフさんが、唐突にそう声をかけてきて。
『…はあ?』
何の話だと眉を顰める。
視界の隅に、なんだか真っ赤な顔で逃げようとしている涼ちゃんと、その手を掴んで逃がさないよと言いながら薄笑い浮かべてる元貴がいて、おいなに手を繋いでんだよ、とスタッフとの会話から一瞬だけ離脱した。
『やばいっすね、爪痕』
苦笑いを含んだ小さな声でそう言い残し、採寸終わりでーす。と去っていく。
刹那、俺の中で時が止まって。
マジで?爪痕なんて思い当たるのはひとつしかない。っていうか、タンクトップでも隠れてない爪痕ってどんだけ。
なんか色んなものがフラッシュバックして恥ずかしいような嬉しいようななんとも言えない感情が一気に押し寄せた。目眩がしそうだ。
『若井、お前さあ』
少し離れたところから元貴の呆れ返った声が聞こえて、はっと視線を向ける。
湯気でも出てるかと思うほど真っ赤になっているであろう顔を隠すように俯いて、逃げるのを諦めた涼ちゃん。その肩に腕を回した元貴が、すんごくにやにやしてる。
『その彼女に言っといてよ、激しいのはほどほどにしてーって』
ね、涼ちゃんもそう思うでしょ!と半笑いの表情で目は笑ってない元貴が横の涼ちゃんに視線を流す。
……うわあ、悪魔がいるわ。
『そ、ソウダネ』
ここで慌てるのはよろしくない、と分かってはいるんだろうけど、今にも死にそうな顔の涼ちゃんが絞り出した声が消え入りそうで震えている。
その後は、俺としては恥ずかしいよりも、束縛されてる?それだけ気持ちいってことじゃん?とか思えてなんだか気分が良かった。
涼ちゃんにとってはそんな軽いもんじゃなかったみたい。まあ、そうでしょうけど。
「だから、今日は、…シない」
若井にも元貴にも迷惑かけちゃう。
消え入りそうな声で呟く。恥ずかしいのもあるんだろうけど、そうか。迷惑をかけたってことが嫌なんだ。
「ごめん、僕、激しかったみたいで」
「いや、激しくしてんのは毎回俺じゃね」
即言葉を返すと、のしかかられた状態で両手で顔を覆い、なんでそんな恥ずかしいこと言うんだよぉ!と嘆いた。もうずっと顔が赤い。
元貴だって、涼ちゃんが激しいんじゃないってことくらいわかって揶揄してるだけで。むしろ俺に釘を刺したんだろうと思う。
どうしたもんかね、とソファに広がってる涼ちゃんの色落ちしかけた髪を眺めながら考える。
恋人だしセックスするのは普通でしょ?抱きしめ合うのだって当たり前だし。
そうこうしている間に、涼ちゃんが、だって。と言葉を小さく紡ぎ出した。
「気持ち良くなると、わけわかんなくなっちゃて、怖くなる、から…しがみついちゃって」
「…わけわかんなくなる程、気持ちいいんだ?」
顔を覆った手の指の隙間からすくい上げるようにこっちを見て、うぅぅ。と拗ねるように呻いている。
「つ、めあと…ごめんね」
もう、スルとき、ギュッてしないから。
冗談抜きで、本当に呆れるほど馬鹿で愛おしいなあ、と思う。年上に向ける言葉じゃないかもしれないけど。
肌蹴たシャツの隙間から手を差し込んで、硬くなってる乳首を撫でる。
「っあ、」
途端、びくん、と体が跳ねて震えた。
「こんな感じやすくて、すぐにぐずぐずになっちゃう涼架には無理でしょ」
事が進めばきっと、なんにもわかんなくなっちゃって、俺の名前呼んで啼いてしがみついてくるのは目に見えてる。
制止のためにか手首を掴まれたけど、構わず乳首から脇腹、臍と滑っていく。その指の動きに、涼ちゃんは体をびくびくさせながら喘ぐ。
「だ、め…っ、しない…ってば」
首を横に振って、今にも泣き出しそうな表情。
頑なだなあ。と思い、笑ってしまう。
「涼ちゃんがわけわかんなくならないようにするから」
どうやってかは知らんけど。と思いながら適当に言う。
恋人とセックスするのに理性刺激しないってなんだよ。
少なくとも俺は、言葉とか動きとかひとつひとつに敏感に感じて体を開いてくれる涼架が見たいわけで。
手を伸ばしてギュッてしがみついてきて、だめ、もうやだ、きもちい、ひろと、って理性ぶっ飛んで乱れまくってる姿がいいわけで。
大体、元貴とかマネージャーとか、近しいスタッフさんは皆周知の関係だし。今更、無知のスタッフさんに爪痕がどうこう言われたくらいで、なんで我慢しなきゃいけないんだよって話。
寧ろ、自分が気持ちよくさせて理性飛んでってわけわかんなくなった恋人がつけた爪痕なんて、消えなくてもいいくらいなのに。
(だめだ。シナイって選択肢は俺の中にないわ)
ぐるぐると考えながらも、額や耳、頬に首筋、鎖骨と肩と啄むようにキスを続ける。
だめ、だめ、と喘ぐ合間に言ってはいるものの制止の手は震えるばかりで意味を成していない。
シナイってどの口が言うんだよ、全部煽ってんだよ、と心の中でつっこむ。
乳首を舐めて噛んだところで
「っあ、ぁっ」
一際大きく啼いて仰け反った体。
水色の髪がソファを叩いて乱れ、自分の中でさらに熱が上がった。
もぉ、と泣きそうな声。
「だめだよ…ッわけわかんなくなるから…っ」
ひろとがすること。ぜんぶ、気持ちいいからっ。
もう十分乱れてゆるゆるになった唇から吐き出された言葉。
え?…怒ってるの?泣いてるの?本当に、シナイつもりでいる?馬鹿みたいに扇情的な事言ってるのにシナイって、それ受け入れる馬鹿なんているわけないでしょ。
真っ赤な顔で目を潤ませて、舌っ足らずにそんなこと言うなんてさあ
俺を、最大級に煽ってるの、わかってる?
「わけわかんなくなったら、ごめん」
前言撤回とばかりに言い、なんで、と目を見開いた涼ちゃんに構わず。
俺は、その体を掻き抱いた。