TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「でもね。まったく餓死者がでなかった場所があるの……」

ぼくは、また悲しい歌を歌った。

心の中で……。


そう。その答えはもう知っている。

「そう、この街です」

「羽良野先生? 村の人は200年近く生きていたの?」

羽良野先生は、頷き。そして、首を振った。

「彼らは生きていないところもあるの。呪い? いえ、自然よ……。永久腐敗。それが彼らの身に起こったことだった。それがこの世のものとは思えない悲劇を産んでいるの。そう、私もそうなの……彼らと同じ……人を食べないといけない体なの……」

「え?」

羽良野先生は醜い顔のまま。女の子のように泣き出した。

「ごめんね……。ごめんね……。歩君……」

ぼくはそんな羽良野先生に何も言えなかった。

羽良野先生も悲しい人だった。

不死の人たちはみんな悲しい。

「私も同じなの……人を食べないと生きていけないの……生きていけないの……」

羽良野先生は泣き崩れ、同じ言葉を繰り返し繰り返していた。




幾つものあばら家にガソリンを撒いた。

村全体のガソリンの揮発性で鼻がどうにかなるくらいだった。もう、暑い昼が過ぎ。夕暮れの時間になっていた。羽良野先生は涙を流しながらライターを取り出した。

「もう終わりにしないと……」

「これで最後よ……」

「お父さん。お母さん。おじいちゃん……ごめんね……」

そんなとりとめのないことをこぼしながら羽良野先生は、村の端の一軒のあばら家に火を放った。


村田先生が急に散弾銃を撃ちながら叫んだ。

「早く! 村の人たちが起きてしまった! 農耕車から子供たちを助けたい!」

「待って! 羽良野先生。どんなに悲しくても……命は粗末にしたらいけないって、おじいちゃんが言っていたんだ!」

しばらく、羽良野先生はぼくの言葉が耳に入っていないかのように、次々とあばら家付近の藁に火を点けていった。

火炎が村を襲う。

地獄の業火のような火炎だった。

その炎はバラバラの子供たちごと村中を包みこんでいく。

白いスープと死者の街

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚