赤side
母親はヒステリックな人だった。
怒られたらごめんなさい。命令されたら黙って従う。愚痴を零されたら母親を肯定。
父親は居なかった。死んでるのか生きてるのかも分からない。顔も知らない。
1日中家に閉じ込められていた俺と週に1度しか家を出ない母親。
保育園はもってのほか幼稚園も行ったことがなかった。
裕福とは言えないけけど貧乏って訳でもない生活。
そんな中で生きていたから友達との付き合い方なんて分からなくて、
初めて同い年の子と触れ合った小学校では上手く息ができなかった。
みんなの輪に入れない。入れてって言えない。1人で机の模様とにらめっこをしては毎日時間が過ぎるのを待っていた。
高学年になって自分が浮いていることに気がついた。けれど今更自分を変えるなんて俺には到底できなくて、惨めさと情けなさで毎日消えたくて仕方がなかった。
小学校を学区外から通っていた俺は中学生に入ると同時に同じ小学校だったほとんどの人と離れた。
クラスの中心にいた人の真似をして明るく愛想の良い振りをしたけれど空回りで、俺はいつもいじられ役で俺はいつも馬鹿な子で
苦しくて苦しくてふとした瞬間に呼吸の仕方が分からなくなる。
そんな毎日だった。
突然のことだった。
…中学校2年の夏。母親が死んだ。
原因はあまりよく覚えていない。
心にぽっかりと穴が空いたような心地がして、でも開放されたと安堵している自分もいて
ぐちゃぐちゃで何も分からない。
そんなことを思った覚えがある。
理解の追いつかないままの葬式だった。
葬式で初めて親戚と会った。父親にも。
あ、生きてたんだ。
なんてことを思って、親戚なんていたんだ俺になんて思った。
初めましての父親に一言だけの言葉と共に渡された通帳。
そこに入っていたのは膨大なお金で、それは高校、大学、残りの中学校生活にどれくらいのお金がかかるかなんて知らない俺でも一生暮らしていける額であると理解できてしまうような金額だった。
「生活費」
その言葉の意味がはっきりとわかってしまう金額。
この人は俺の面倒など見るつもりがないのだ。言ってしまえばこれは手切れ金で、俺はこれからの生活に不安を感じて途方に暮れる心配はないということ。
今自分が何を思って何を感じているのかも分からなかった。
親戚の誰も俺を引き取りはしなかった。
彼らには引き取る理由も権利もなかった。
俺は1人になった。
俺は母親の腕に包まれる優しさを知らないし、父親に頭を撫でてもらう温かさも知らない。
知らないまま独りになった。
親戚の1人が家を貸してくれた。彼らは母親が何も残していかなかったのを知っている。だから貸してくれた。ただでいいと。その代わり迷惑はかけるなと。
もうなんだかわけが分からなくて、
理解するまもなく状況が変わってるいく。
なんのために生きているのかも分からなくて、
俺の元には1人で住むには広い部屋と膨大なお金だけが残って、
でも泣いている俺を抱きしめてくれる人はどこを探しても居なかった。
誰でもいいからと叫び続けて疲れ果てて心はずっと空っぽで
母親なんて嫌いだって思っていたはずだけどあの人がいたから心はなんとか平常を保てていた事に気がついて、気がついてしまったことに余計に嫌気がさして
逃げたくて逃げたくて
刃を自分へと向けたのはそんなのが理由だった。
痛かった。
切ったところが熱くて涙が出て何がしたいのか分からなくて、ずっと心はぐちゃぐちゃで、でもそのぐちゃぐちゃは俺の心を埋めてはくれない。
その瞬間は全部を許された気分になるのに終わったあと待ってるのはただただ苦しいだけの時間。
そんなことを何度か繰り返して、腕にはみみず腫れが痛々しく残っていた。
死なない理由も分からない。生きている意味も知らない。
ただ1度俺だけを見て抱きしめて欲しかっただけ。
そんなくだらない夢を掲げて学校では馬鹿みたいに笑顔を貼り続けていた。
思い出したくもない中学校時代は終わり、俺は高校生になった。
家から徒歩で通える距離の学校。
中学生の時の元気で明るい莉犬くんは消せないままで、高校生でも同じ道を辿るのかと自分を嘲笑ったけれど
癖になってしまったそれは辞めることができなかった。
薬の飲みすぎがはたまた吐きすぎか、それとも精神的な何かか体調を崩すことが増えた。
学校が始まったばかりというのに週2で保健室を利用している状況。
初めは優しく俺の話を聞いてくれた先生も次第に俺が来る度少し面倒くさそうな表情をするようになった。
そしてそのうち俺が来るとわかっている曜日・時間帯には保健室を開けるようになった。
俺のせい。
俺が悪い。
でも戻りたくない。
戻ろうとすると吐き気がする。お腹が痛くなって動けなくなる。
誰もいない保健室でいつも通り泣いていた時君に出会った。
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結末も決めててもうすぐ終わる予定だったのに書いてたら長くなってっちゃう..🥲💦
全然終わりが見えない…( ՞߹𖥦߹՞ )
コメント
4件
赤くんの過去めちゃくちゃ辛い😭赤くんの過去を知れば知るほど桃くんは希望でほんとに救いの人なんだって思えました!桃くんにとっても赤くんは希望で大好きすぎる人だから2人で幸せになってほしいです🥺主様の書く赤くんsideも桃くんsideもめちゃくちゃ好きです💕情景見えてきて感情移入しちゃうよーな!続き楽しみです!
ほんとにほんとに大好きです…😭🫶🏻