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♧視点
打ち上げ会場は、にぎやかな笑い声と酒の香りに包まれていた。
アニメ第1話を終えた解放感と、スタッフたちの幸せが充満している。
俺はと言えば、グラスを片手に周囲と談笑しながらも、隣の彼女をチラチラと気にしていた。
ったく、また無茶なペースで飲んでんな。笑
♧「お前、ちょっと飲み過ぎじゃない?」
❀「全然平気ですけど?」
酔ってないと強がる彼女の顔は、明らかに赤い。
いちごみたいだな。
♧「いや、顔真っ赤。」
❀「…ほっといてください」
このツンデレ具合。
いつものことだけど、酔ってる分さらにわかりやすい。
ほんと、バカだよな。そんなに無理しなくてもいいのに。
けど、そんなところが可愛くて仕方ないのが悔しい。
それからしばらくして、俺はスタッフに呼ばれて少し席を離れた。
ス「黒崎くんも最後まで頑張ってくれたよね!」
♧「いやいや、皆さんのおかげっすよ」
そんな風に会話を交わしながらも、意識の半分は彼女に向いていた。
グラスを傾ける彼女の姿が視界の端に映るたび、無性に気になって仕方がない。
……俺、何やってんだ。
ただのツンデレコンビ。
お互いにからかい合って、どうでもいいことで張り合って。
そんな関係のはずなのに。
なのに、桐崎の表情が気になって、酔って赤くなった顔まで妙に可愛く思えて。
……いや、可愛いとかじゃなくて。
否定したくても、もう無理だった。
少しして席に戻ると、案の定彼女はトロンとした目で俺を見上げた。
❀「……ん?」
♧「おい、大丈夫か?」
❀「……よゆーです」
そう言いながら、彼女の身体は少しぐらついている。
♧「いや、どう見ても余裕じゃねーだろ」
呆れつつも、どこか放っておけない。
こういう時に素直に甘えてくれれば楽なのに、こいつは絶対にそれをしない。
俺は桐崎の肩をそっと支えた。
もう、ほっとけねぇよ。
そして――
次の瞬間。
♧「……っ!」
桐崎がふらりと俺にもたれかかってきた。
頭が俺の肩に触れた感触が、じんわりと広がる。
♧「お、おい……!」
驚いた声を上げつつも、俺は固まってしまった。
❀「……すみません、ちょっとだけ……」
か細い声でそう言った彼女は、もう半分眠っているようだった。
ちょっとだけって……いや、めちゃくちゃ可愛いんだけど。
頬にかかる髪の毛の感触も、微かに感じる彼女の温もりも、やたらと意識してしまう。
そして、極めつけは――
❀「……照れてるんですか?」
半分眠ったような声でそんなことを言われて、俺は完全に動揺した。
♧「はぁ!? 誰が照れてるって?」
❀「……ふふっ」
そんな俺の反応が面白いのか、彼女はくすっと笑う。
くそっ……なんだよ、それ。
こっちは必死に平静を装ってるってのに、彼女はあまりにも無防備すぎる。
ほんと、ズルいよな。
♧「ったく……しょうがねぇな」
小さくぼやきながら、俺は彼女が楽に眠れるように、そっと肩を貸した。
酔っ払い相手に振り回されるのは面倒くさい。
けど、桐崎がこんな風に俺に寄りかかってくれるのは、悪くない。 決してセクハラとかじゃねーからな?
いや――
むしろ、もっとこのままでいてほしいと
思うのは駄目なのか?
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長旅お疲れ様。おかえりなさい。そしていってらっしゃい