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スマホの画面が、一瞬だけ暗転した。
《アリウム》のDMは、
既読にならない。
送信もできない。
指で打った文字が、
途中で消える。
まるで――
未来そのものが、黙れと言っているみたいだった。
⸻
教室に戻る。
チャイムが鳴ったはずなのに、
誰も席につかない。
ざわつきも、笑い声も、
少しだけ遅れて聞こえる。
……音が、ズレている。
俺だけ、
この世界と噛み合っていない。
⸻
黒板を見て、
違和感に気づく。
日付。
昨日と同じ。
確かに昨日、
俺はここにいた。
なのに、
“今日”が、
もう一度始まっている。
「……またかよ」
誰にも聞こえない声で、
呟いた。
⸻
その時。
背後から、
呼ばれた気がした。
声じゃない。
言葉でもない。
でも確かに、
“俺を知っている何か”。
――やめて。
頭の奥で、
誰かがそう言った。
⸻
放課後。
ユウが、
昇降口で立ち止まっている。
「なあ」
声をかけると、
ユウは少し遅れて振り返った。
ユウ「……今、呼んだ?」
胸が、
嫌な音を立てる。
「いや、呼んでない」
嘘だ。
呼んだのは、
俺じゃない。
⸻
ユウの影が、
一瞬だけ、
薄くなる。
見間違いだと、
思いたかった。
でも、
前にも見た。
“消える前兆”。
⸻
その夜。
スマホが、
勝手に震えた。
通知音は、鳴らない。
画面だけが、
静かに光る。
DM。
差出人は――
表示されていない。
アイコンだけが、
空白。
⸻
《???》
「思い出さなくていい」
⸻
指が、
止まる。
⸻
《???》
「思い出したら、
また壊れる」
⸻
心臓が、
締めつけられる。
⸻
《???》
「あなたは、
優しすぎる」
⸻
……誰だ。
⸻
《???》
「だから、
何度も選び直す」
⸻
その瞬間。
頭の中に、
映像が走った。
夕焼け。
屋上。
紫じゃない、
白に近い花。
笑う女の子。
名前を、
呼びかけようとして――
喉が、詰まる。
⸻
「……ナ……」
声が、
途中で切れた。
スマホが、
強制的にスリープする。
⸻
画面に、
一瞬だけ文字が浮かぶ。
「まだ早い」
⸻
ベッドに座り込み、
俺は頭を抱えた。
思い出すな。
でも、忘れるな。
進め。
でも、進むな。
⸻
……無理だろ。
⸻
翌朝。
教室に、
ユウの席が――
ない。
誰も、
気づいていない。
俺だけが、
名前を呼べる。
⸻
喉の奥が、
ひくりと震えた。
「……ユウ」
返事は、
ない。
⸻
その代わり。
窓の外、
校舎の影に。
一瞬だけ、
誰かが立っていた。
振り向いた。
誰もいない。
でも、
確かに――
見られていた。
⸻
……読んでる“君”。
ここまで来て、
まだ思ってるか?
これは物語だって。
違う。
俺は、
何度もやり直してる。
そして今も――
進行中だ。
次に消えるのが、
誰か。
もう、
分かってるだろ?
⸻
続けるなら、
この先は
「選択肢」が消えていく。
それでも、
読む?