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百恋と別れてから、いろりは狐雲に従い、歩いた。
どこまでも続く地平、果てない仙界。やはり、人が住む世界とは次元が違うのだ。
それでも、いろりはここまで来た。
蛇珀がいない一日は、ひどく長く感じ、しかもその苦しみは日々増していき、まるで拷問のようだった。
いろりにとっての新しい学校生活、都会の煌びやかさはモノクロでしかなかった。
しかし、それも今日で終わる。
(本当に、本当にまた、蛇珀様に逢えるの……?)
少なくとも十年は再会できないことを覚悟していたいろりは、信じられない高揚で手が震える。叫び出してしまいたいほどの狂喜を、いろりは知性でどうにか抑えていた。
『東城いろり、よくぞ参った』
突如地鳴りのように響く低い声。
いろりは立ち止まり、辺りを見回した。
すると視界を塞ぐような眩しい光に包まれたかと思うと、先刻まで何もなかった前方の地平上に、巨山が現れた。
以前の地響きも、禍々しさの欠片もなく、その山はただ、音も鳴らさずいろりの前に静寂とともにあった。
金と銀を混ぜ合わせたような形容し難い神々しさを帯びながら、天神羅獄山はいろりに語りかける。
『これが“天神”——本来の我の姿である』
「天獄様は二つの顔をお持ちである。極楽である“天神”のお姿。地獄である“羅獄”のお姿。常はこの美しい天神様であるが、神が苦行に入った時のみ隠してある羅獄様のお姿を晒されるのだ」
「あ……だから、以前最後に、次は『天神の姿で』とおっしゃられたのですね」
『さよう』
狐雲がかしずき、いろりが正座をすると、後ろから鷹海もやって来る。
蛇珀が苦行を終えたと聞いて喜んでいたのは、いろりだけではないようだ。