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第2話「一瞬のキス」
放課後、教室で王様ゲームが始まった。俺は周りの騒ぎに混ざりつつも、自然と直人の隣に座っている。
ゲームが始まって10分。王様の声が響く。
「命令は…3番と7番、一週間毎日キス!」
手のひらに目線をやると3と書かれたくじがあった。7が直人だったら…。そんな妄想をしているうちに、直人が声をあげる。
「あ、俺7」
一気に胸が跳ねた。鼓動で周りの音が聞こえなくなった。
直人は隣で小さく笑っている。
「お前かよ。しょうがないな」
直人の軽い笑い声に、さらに動揺する。こんなに落ち着きがない自分、初めてかもしれない。
「じゃあ1日目のキスどーぞー!!」
「じゃ……やるか」
思わず口に出すと、声が震えた。直人は目を細めて、どこか楽しそうだ。
「意外とドキドキしてる?」
「してないわ!」
うまくごまかそうとするけど、唇が少し震えているのを自分でも感じる。
直人はそっと俺に近づいた。
「目、閉じろ」
緊張しながらも目を閉じる。俺の体温が伝わる距離で、息が荒くなる。
軽く触れるだけのキス。ほんの一瞬。
唇が離れた瞬間、周りの声で現実に戻る。
「うわー!」「やばい!」
でも俺の胸はまだ締め付けられている。
直人は小声で笑った。
「…まったく」
俺は必死で平静を装う。
「命令だから、仕方ないだろ」
「とか言って~」
そのやり取りだけで、もう一週間の長さが想像できないほど重く感じる。
──俺は完全に直人を意識してしまった。
教室のざわめきの中、握りしめた拳を下ろす。
あの一瞬のキスの感触が、頭から離れない。
残りの六日間、俺の心臓はきっと一度も落ち着かないだろう。