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玖衣那 喰
133
ガヤガヤと騒がしい店内の個室の角部屋。
「いやー、やっぱり単位がなぁ」
「お前がサボってたのが悪いんだろ。自業自得」
「なんとかしてくれよ!まじで」
「知らね」
友人と飲みながら話す内容が毎回決まって単位のことで最近は飽き飽きする。
だがコイツには良くしてもらっているので飲みの誘いを断るわけにもいかない。
かといってコイツは酔うとめんどうくさい。
「お前そんくらいにしとけって」
「んでだよ。俺はまだまだいける」
「馬鹿みてえなこと言ってんじゃねえよ」
水を押し付けてやたらとくっついてこようとする友達を押しのけながら携帯を取り出す。
LINEの未読数はいつの間にか30件。
女とはどうしてこんなにめんどくさいものなのか。
既読をつけずにLINEを閉じ、インスタやTikTokを適当に見て携帯をまた閉じた。
「お前ってほんと無関心だよなあ」
「なにが」
「だって俺の話ほとんど聞いてくれねえし!」
「そりゃお前の話は毎回決まって単位だからな」
「助けてくれって!」
「知らね」
そんなのを繰り返している間に終電が近づいている。
「おい。そろそろ出るぞ」
「はー、もっと飲みたい」
「じゃ置いてくわ」
「待てって!」
適当に千円札を何枚か出して押し付け、店内を出る。
ふと香った懐かしい煙草の匂いに周りを見渡す。
どうやら裏口の方から匂ってきているらしい。
少しの期待。
その期待から裏口を少しのぞいた。
「ふぅ」
煙草を口に咥え、黒縁のメガネを上にくいっと少し押し上げる動作。前髪は少し長くて、口元には小さなホクロ。
少し痩せただろうか。
「先生」
あれはきっと先生だ。
確信した。
「ん?」
その瞳が俺を捉えた。
顔には驚きが混じっている。
「湊?」
「先生、俺のこと覚えてるんだ」
名前を呼ばれて鼓動が早まる。
久しぶりの先生に喜びを自分でも隠しきれない。
「久しぶりだなあ。あの頃よりでかくなったな」
「先生縮んだ?」
「ちぢんでねえよ 笑」
あの頃みたいなからかいがまだ通じることに嬉しさを感じる。
「にしても本当にばったりだな」
「先生のタバコの匂い独特だから」
「臭いってこと?」
「いや、なんていうか。先生だけの匂いっていうか」
「ふーん」
先生と俺の身長差は6cm。
先生は俺を少し見上げなきゃいけない。
先生は俺の目を見て話そうとしてくれる。
見上げた時の上目遣いがとてつもなくかわいい。
「終電近いだろ?送ってってやろうか」
「終電?なにそれ」
「おいおい。冗談だよな?」
まだ先生と話していたい。
まだ再会したばっかりなのに。
「わかんないな。先生って家近いの?ここから」
「まあ俺はな」
「じゃあ泊めてよ。スイカ落としちゃった」
「はあ?それはまずいんじゃないか?今すぐ駅員さんとこ行ってこい」
「嘘」
「おい」
先生は吸い終わった煙草の火を消して俺に近づいた。
「大学どうだ?」
「友達が単位単位ってうるさい」
「はは。手伝ってやれよ」
「やだよ」
「薄情者が 笑」
「ほら。行くぞー」
「なんでよ。帰りたくない」
「明日も大学だろ」
「午後からだし」
「だとしてもだよ」
先生は駅の方へどんどん進んでいく。
「泊めてくれたっていいじゃん」
「いやー、さすがにな」
そこで俺ははっとした。
もしかして。と思い、先生の薬指を見る。
そして安堵した。
何もついていない。
「よかった」
「なにがだよ」
「なんでもない」
駅まで徒歩5分。
もっと長くてもいいのに。
誰だよ。そこに駅作ったやつ。
「じゃあ連絡先ぐらい教えて。インスタでいいから。LINEがいいけど」
「LINEなら」
「じゃあLINE」
QRコードを差し出す。
先生は読み取って「おっけー」と呟いた。
「また今度いっぱい話そ。先生」
「おー。時間が合えばな」
「合わせて」
「わがままだなおい」
そうして俺はしぶしぶ駅の改札をくぐった。
𝐧𝐞𝐱𝐭
コメント
1件
ええっ、第1話からもうドキドキが止まらなかったよ!!湊くんの先生への執着心、煙草の匂いで気づくところとか、薬指をチラッと見て安堵する場面がもう尊すぎて叫んだ😭💕LINE交換までの駆け引きと先生の余裕ある感じのギャップもたまらん…!続きが気になりすぎて今夜眠れないかも〜!!✨