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「溺愛オプション提供部・週次報告」
会議は、毎週月曜の朝九時。
議題はいつも同じだ。
「では、
今週の“溺愛オプション”
稼働状況から」
プロジェクターに映し出されるグラフ。
満足度。
継続率。
炎上率。
解除理由。
「全体としては
順調です」
担当者が言う。
「ただし」
そこで、
スライドが切り替わった。
ケースA
《依存過多型》
「依頼主が
“自分で選ぶ”行為を
完全に放棄しました」
「症状は?」
「朝、
どの靴下を履くかで
30分フリーズ」
「オプション側の
対応は?」
「選択肢を
提示し続けました」
「結果?」
「解除後、
自力回復まで
半年」
「……まあ、
想定内」
ケースB
《過剰最適化型》
「依頼主が
“不機嫌を感じる前に
不機嫌が処理される”
状態に」
「それ、
成功では?」
「本人が
“怒った記憶がない”と
訴えました」
「……」
「解除理由は
“私、まだ人ですか?”」
会議室に、
軽い笑いが起きる。
「哲学的ですね」
「次」
ケースC
《勘違いロマンス型》
「溺愛を
“相互的な愛”と
誤認」
「説明は?」
「契約書に
太字で
“片方向です”と
書いてあります」
「それでも?」
「“彼も私を愛しているはず”
という信念が発生」
「解除時は?」
「泣きながら
“あの人を解放する”と」
「……優しいですね」
「はい。
こちらは
胃が痛かったですが」
ケースD
《社会不適応転用型》
「職場に
そのまま連れて行きました」
「何を?」
「溺愛オプションを」
「……は?」
「上司の感情を
先回りして処理し、
同僚の地雷を回避」
「それ、
便利では?」
「依頼主だけ
異常に評価が上がり、
職場が崩壊しました」
「……なるほど」
総括
「溺愛オプションは」
部長が、
指を組んで言った。
「“幸せ”を
直接生むものでは
ありません」
「“事故を防ぐ”
商品です」
「事故が必要な人には、
向きません」
「ただし」
部長は、
にこやかに続ける。
「事故を
絶対に起こしたくない人には
非常に好評です」
別の担当が言う。
「最近、
面白い解除がありました」
「ほう」
「“溺愛を外します。
事故るので”」
会議室に、
どっと笑いが起きた。
「健全ですね」
「はい」
「そのオプション個体、
今どうしています?」
「再配置済みです」
「どこへ?」
「専門用語に強い
技術者の下僕枠へ」
「適材適所だ」
部長は満足そうに頷いた。
付記
溺愛オプションは、
今後も改良され続ける。
より優しく。
より安全に。
より失敗しないように。
失敗できない人のために。