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ハリアー・リーガ・ガリアンは侍女達に言って帰国の準備をしていた。

「アルアドネ一旦帰るが、お前も婚約者を作らないか?。とりあえず、帝国の姫を娶る事を勧めるぞ」

苦笑いのアルアドネ・サバイ・コンタノールは組んだ腕を外して髪をかき上げた。

「そうだな、帝国の姫ならいいかもな」

「ああ、親父に話しておく」

「悪いな」

ハリアーはあっと思い出した顔で、

「そう言えば、最近うちの国で噂になっている話があるんだ」

「噂だと。お前がそんな噂信じるとは珍しい」

「まぁな、でも面白いから情報を集めたのさ」

「へぇ〜、で?」

「お前、勇者って信じるか?」

アルアドネは口をアングリと開けた。なんとも間抜け顔である。

「勇者、とな?」

「ああ、帝国に勇者が現れた」



王太子が国王に即位してから1日が経った。

昨夜は王都の民達に向けて、演説用のバルコニーから自分が「即位した」とパフォーマンスをしていた。とルイが見に行ってくれたので話を聞いただけだけれど。

行こうと思ったらラルを筆頭に皆んなに止められたのだ。朝になって号外がばら撒かれて、演説を知らない人も知る事になった。


今は学園の中庭でラルと昼食を食べている。寮のキッチンで肉巻きおにぎりと温野菜のサラダを作って来た。この世界にも米文化はあり、日本米というより、長細いカリフォルニア米に近い物である。肉は豚肉に似た味のブブの肉で、ブブは猪に似ているが大きさは牛くらいあるそうだ。そのブブのバラ肉を豆を発酵させたソースと蜂蜜で照り焼きにし、俵形の米に巻いた簡単な料理。

「ふむ。美味い!」

とご機嫌でいると横からデコピンが飛んできて

「イタッ」

「言葉遣い」

と注意された。

ラルは婚約者になっても私の扱い方は通常運転である。

あぁ〜平和だなぁ〜…

昨日城ではいろいろあったみたいだけど、私達には火の粉は飛んでこなかった。

城で働く父親や兄がやってくれたのかも?と思ったけど、まぁいいかと気持ちを簡単に片付けた。

「ラル、近いうちに大公家にご挨拶に行こうと思う」

「うちに?」

すっかりラルを軽視していたけど、ララドール家って元王族だった家でララドール大公家の王子様なのだ。

「うん、シルサラ様にお会いしなくちゃ」

「母上か。喜ぶよ」

ラルは肉巻きおにぎりをもう一つ手に取るとわんぱく小僧のように齧り付いた。

「ホントこれ美味いな…」

「うふふふふふ…」

胃袋もゲットしたわ。

そこへ、ファリとルイが中庭に現れた。

ファリはニコニコ顔で私達の婚約を喜んで、と言うより興味津々である。ルイはニヤニヤが鬱陶しい。

「エリナーミア様、イーラルド様、お邪魔致しますわ」

「ホントお邪魔だわ」

とイタズラっぽく笑った。

ファリは咳払いを一つするとさっさと本題に入る。

「エリナーミア様、新国王の即位で元国王派の貴族達が処分されましたが、その中でも高位貴族のグレイス公爵は処分保留になっています。新国王の考えは分かりませんが、グレイス家は爵位を落とし、当主がグレイス公爵の弟に代わる話が噂になっています。アリシア様はお家追放で、修道院へ送られると言う話です。

勿論、第2王子との婚約は破棄となる、と昨夜の夜会はそんな噂話が出ていました」

ファリは淡々と報告をしてくれた。新国王、アルアドネの考えで、グレイス公爵の処分保留は彼の持つ派閥が今後を左右する。処分してしまうと、グレイス公爵を退いて我こそはという者が水面下で反アルアドネを掲げて、王都を巻き込む内戦になるだろう。前国王又は第2王子を祭上げ、意のままに操る事も考えられる。それは避けたい。それと、気になるのは王后様と王妃様(第2王子の母)が前に出てこない。

…否、この事に関しては関わらない方が良さそうだ。

「ファリ、報告ありがとう」

とは言ったものの、アリシア・グレイスは何もしていない。父親のとばっちりで修道院って、気の毒になる。直接彼女から嫌がらせを受けてはいなかった。ただ上っ面のライバル視されていると感じていたぐらいだ。

そう思うと目線はラルを見ていた。

ラルは小さく笑うと言った。

「アリシア嬢が気になるか?」

「そうね」

私達の会話にルイは「おーっ」と声をあげた。

「以心伝心ですね」と茶々を入れてくるので、頬っぺたをつねってやった。

「イタタタ…」

ラルはベンチから立ち上がると、

「俺に考えがある」

そして「ご馳走さん」と言って背を向けた。

「考えね…」

そんなラルの背を見送りながら言った。

ルイは残った肉巻きおにぎりを頬張ると「美味しい」とうっとりしながら食べている。


あれから半年の月日が流れて、とある休日の事である。私はボンハーデン家の馬車に送られ、ララドール家へご挨拶に来たのだ。

屋敷のエントランスにてラルとシルサラ様に迎えられ、大歓迎されてシルサラ様との挨拶は問題なく終わった。寧ろ、物凄く喜んで頂けた。

私とラルは庭の東屋で2人の時間を過ごしている。

「たまには剣の稽古をつけてやってもいいぞ」

ラルは私の下ろしている髪を指で絡ませ遊びながら言った。

今日はメガネ三つ編みは無しである。

「そうね。最近サボっているし、たまにはお願いしようかしら」

「ああ、いつでも付き合ってやる」

「ありがとう」

「そう言えば、剣術を習う始まりはなんだったんだ?」

私はカップのお茶に口をつけると、そう言えば邪な理由で習うのを決めたのだった。

「邪な気持ちっなんだけど。前に読んだ本の物語で男装の令嬢が騎士になって、ある革命に巻き込まれる話。それを読んで騎士に憧れただけよ」

実はベルばらではなく、ラ・セーヌの星を好んでテレビを見ていた。ストーリーは忘れたけどね。

「強い女の子。それを目指したかったの」

「強い女の子か。それより強い男に守られたいとか思わないのか?」

ラルは綺麗な瞳でまっすぐ見つめて言う。

「う〜ん。守られるより守りたい、かな?」

「それは誰を?」

「ふふふ」

なんだかラルが可愛く見えてきた。まるで、強い男に守られたいと思わなのか?って、俺に守られたいと思わないのか?とか、守りたいのは誰を?は俺を守りたいのか?とか、「俺を」欲求がチラチラ見える。恥ずかしくて、素直に聞けないなんて、可愛い。

「私よりも弱い人やイーラルドあなたも守りたいわ」

その言葉にラルの顔はゆでだこの様に真っ赤になった。それを隠そうとそっぽを向くが、私は椅子から腰を上げると、テーブルの向こうに座るラルの顔を両手で挟み、まっすぐ目を見つめ

「私にだけその顔を見せて。よその女に見せたら許さない」

と言った。

「エリナ…ミア。お前、言う事が男前過ぎるんだよ」

「あら、私は思った事を言ったのよ。ラルの全てを私は誰にも渡すつもりは無いわ」

ラルは胸に溜めた熱い思いをため息で吐き出すと、私の両手を掴み立ち上がり、隠していた風の魔法で私の体を宙に浮かべると、グイッと片腕を腰にまわし、優しく唇を塞ぐ。

唇が離れると自分の額を私の額にあて、呟くように言った。

「おまえ、その男前のセリフはどこで覚えたんだ。男は女性を守ると言って口説くものだ。おまえを口説くのに俺はなんと言えばいいんだ?」

「イーラルド、いつのまに風魔法を覚えたの?」

「お前の興味はそっちか?」

「違うわ。あなたに興味があるからよ。魔法を使えるなんて私知らなかったわ」

「ララドールは風を操れる力を持っているんだ。あまり表立っては知られていない。婚約したのだから、べつにいいだろ」

私はラルの額から離れると、

「そうね。惚れ直したわ」

「おまえなぁ〜。俺を惚れ殺すつもりか?」

「ふふふ…,。ラルがこんなに甘えたさんだって知らなかったわ」

「もぉ〜」

ラルは私の胸に顔をうずめると、恥ずかしさ爆発と言った感じて唸っている。そして、

「大切にする。だから側を離れないでくれ」

と吐き出すように言った。

私はラルを愛おしく眺め

「うん」

と返事をする。



-エピローグ-


ガリアン帝国、 ポアレ砂漠にて。

ワームのモンスターが砂漠の砂をかき分けて地面から這い上がる。

それを躊躇なく攻め込む若い男の姿がある。

聖剣アントリオンを振り上げ、ワームを切り裂き、トドメをさす。

ワームの紫色の体液が飛び散り、体液まみれの男は呼吸を整えながら、近くで彼が戦う様子をみていた村人達、その中の1人に言った。

「約束だ。ワームを倒したら教えてくれるんだよな」

「はい。有り難うございます。約束の話ですよね」

「ああ」

村人は安堵した表情で約束の情報を話す。

「あの石は、コンタノールの貴族に売ったよ」

「コンタノール?」

男は剣を鞘に収めるとニヤリと笑って言った。

「その話もっと詳しく教えてくれ」


この男、最近騒がれている、ガリアン帝国に現れた勇者である。本人は自分が勇者とは全く知りもしない。ただ目的の為に旅をしているのだ。








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