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るる太📱⚡🐼
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「ただいまぁ。おっ、蜷川どうしたん?」
玄関のドアを開けると、リビングの床に蜷川が少しムスッとした顔で体育座りして待っていた。
怒っている理由は、聞かずとも多分これやな。
「ごめん、一声かけていけば良かったな」
「ほんまに! 弦くんと洸くんが『おとうにおやすみって言う!』って探し回ってましたよ!」
大袈裟にほっぺを膨らませて、子供みたいに怒っている。ほんまに可愛いやつや。
「ごめん、今から言うてくるわ」
「二人とも、もう寝ました! 今日あんだけ暴れてたし、週末やし、よっぽど疲れてたみたいで」
「……そっか。帰ってきてから、あの子らに触れてなかったから、ぎゅうしてもらいたかってんけどな」
「……ぎゅうですか?」
「うん、ぎゅう」
ふふっと笑って、リビングに向かう。まぁ、寝る前にベッドにお邪魔させてもらって、こっちからぎゅうさせてもらおうかな……。
「元宮さん?」
「ん?」
さっきから黙っていた蜷川に呼ばれて振り返る。
ちょっと待ってくれ。椅子が足りひんかった時と同じ顔して、両手広げて待ってるやん。
「……長男のぎゅうじゃ、ダメですか?」
ふふっと悪戯っぽく笑って、俺が来るのを待っている。これはヤバい。顔中に熱が集まってくるのがわかる。
「……いや、長男は弦やし」
照れた顔を見られないように、適当にテーブルにあったまだ片付けていなかったコップを持って、キッチンへと逃げた。
どうしよう、気まずすぎる。
冗談なんやから、冗談っぽく抱きついて、すぐ終わらせた方が良かったかな? どんな顔して戻ればええんやろ。
「……ぎゅう」
「……待って、ほんまあかんて、蜷川」
後ろから急に抱きしめられ、お腹のあたりに蜷川の逞しい腕が回される。
俺の心臓は今にも破裂しそうなほど、うるさく音を立ててる。恥ずかしい。こんなん、俺が蜷川を意識してることが一発でバレてまう。
「……たまにはいいと思いますよ? 人の温もりって安心するじゃないですか」
まぁ、そうなんやけど……。今は安心どころか、動揺がすごすぎる。
無理に引き剥がすのも違うし、一体どうすればええねん。
「……ありがとう。癒やされた。やから、もう、な?」
少し遠慮気味に蜷川の腕から身体を離し、振り返ると、至近距離で目が合う。
あかん、これはまずい……かも。
「……今日、お泊まりの用意してきたんですけど、泊まってもいいですか?」
え、それはどういう意味で……?
いや、ただ帰るのが面倒くさいから、って受け取ってええんよな?
「……うん、もちろん。二人も朝から蜷川がおったら喜ぶわ」
「ふふっ、良かった。シャワー、先浴びてきますね?」
ニコッと笑って俺から離れる蜷川の背中を、ただ呆然と見送る。
シャワー先に浴びる!? お泊まり!?
え、これは何か期待してええやつなんか!?
……いや、ちゃうやん。
あいつはただの優しさで、疲れてる俺に接してくれてるだけや。俺だけが勝手に勘違いして、自意識過剰で自爆してどうすんねん。
「……とりあえず、コップ洗お」
新の言葉に揺さぶられ、今度は蜷川の行動に引っ掻き回される。
バタバタと音が鳴り響く胸を押さえつけながら、俺は冷たい水で食器を洗った。
蜷川がシャワーを浴びに行った後、俺はとりあえず2階に上がり、弦と洸が眠るベッドへと転がり込んだ。
行儀よく綺麗に寝ている洸とは対照的に、弦はベッドの柵に両足を引っ掛け、アクロバティックな体勢で熟睡している。ほんま、寝相にまでそれぞれの性格が出てくるのがおもしろい。
「……一週間お疲れ様。よく頑張りました」
二人を両腕でそっと抱き寄せ、自分に言い聞かせるように呟く。
さっき蜷川に触れられていた時の緊張感とは違う、いつもの、深く安らかな安心感。
ふわふわで優しくて、小さな心臓の規則正しい音が俺の胸にじわじわと幸せを染み渡らせていく。
微睡の中、うとうとと意識が遠のいていく。明日は休みや。このまま少し寝て、夜中に起きたらシャワーでも浴びればええか……。
「……宮さん、元宮さん」
「ん? ……蜷川?」
耳元で名前を呼ばれて、薄く目を開ける。
そこにはお風呂上がりでシャンプーのいい匂いをさせた蜷川が、俺を覗き込んでいた。
「……シャワー浴びないですか? このまま寝ちゃいます?」
「ん……あぁ、目覚めたし、シャワーいこかな」
大きく伸びをしてベッドから立ち上がる。
俺にホールドされていたからか、弦の体勢もいつの間にかちゃんと綺麗に戻って眠っていた。
「……俺、下のソファで寝ますね?」
申し訳なさそうに言う蜷川に、俺は首を振った。
「いや、蜷川大きいから、うちのソファやとはみ出してしまうわ。俺のベッド使ってええから」
「……いいんですか?」
「あ、気持ち悪いよな?ごめん、ちゃんとシーツ変えるからちょっと待っといて」
急いで自分の寝室に戻ると、後ろから蜷川が静かについてくる。
うわ、静まり返った部屋で二人きりは流石に予想外やった。はよシーツを変えて、ここから逃げな俺の心臓がもたん。
「いいですよ、そのままで。俺、元宮さんの匂い好きですから」
「え!?」
あまりの言葉に、シーツに伸ばした手がピタリと止まる。
「ふふっ、元宮さんタバコ吸わないですし。俺、人間の自然な匂いって結構好きなんですよね」
あー……そういう意味か。人間として、大きいくくりでの話な。
でも良かった。「おっさん臭無理!」とか露骨に嫌な顔をされたら、明日からどんな顔をして蜷川と話せばいいかわからんくなるところやった。
「……じゃあ、とりあえず枕カバーだけ変えとくわ。あとはゆっくり休んでな」
「はい、ありがとうございます」
手早く枕を整え、俺は逃げるようにシャワーへと向かった。
さて、お風呂から上がったら俺はどうしようか。さっきみたいに、もう一度弦と洸の間に挟まれて寝るのも悪くない。