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配信を終えたあとの空気は、いつも少しだけ現実味がない。
ライトを落とした部屋に、画面の残光だけが揺れている。さっきまで賑やかだった時間が嘘みたいに静かで、その落差が心地よかった。
ヘッドホンを外した瞬間、耳に残っていた熱がふっと消えて、静けさが戻ってくる。
画面の向こうでは何千人もの人がいたのに、部屋には自分の呼吸音しか残らない。
その静けさが、今日はやけに柔らかかった。
理由はすぐわかった。
背後にする気配がその答えだった
振り返らなくてもわかるくらい、慣れた存在。
ほとけ。
椅子の背にもたれた瞬間、肩に軽い重みが乗る。遠慮がちなようでいて、逃げる気はない距離感。
その体温が、思ったより近い。
少しだけ甘い匂いがして、意識しないようにしていた感覚が静かに浮かび上がる。
配信者としての距離なら、こんな風にはならなかったはずだ。
最初はただ、活動者として気になっただけだった。
声が綺麗だと思った。
感情の揺れ方が好きだと思った。
気付けば、触れたいと思っていた。
最初は触れられるわけがないと思ったその存在。
今は隣にいるほとけの髪が、頬に触れそうなほど近い。
無意識に手が動く。
でも触れるか、触れないかの位置で止まる指先。
その後少し考えてそっと髪に触れる。
軽く整えるように、ほんの一瞬だけ。
それだけなのに、指先から心臓まで熱が走る。
ほとけは嫌がらない。
むしろ、少しだけ身体を預けてくる。
その小さな変化が、胸の奥を強く揺らした。
こんな風に触れられる関係になるなんて、思っていなかった。
でも、もう自然だった。
隣にいることも。
肩が触れることも。
無言のまま、同じ空間を分け合うことも。
指先が手に触れた。
偶然のはずなのに、どちらも離さない。
少しだけ絡む指。
ぎこちないわけでもなく、でも慣れすぎてもいない、絶妙な距離。
静かな部屋の中で、触れた部分だけが温度を持つ。
配信中は、こんな顔見せないのに。
横顔が近い。
目を閉じたときの表情が、あまりにも無防備で、綺麗で。
こんな風に愛おしいと思ったことがあるだろうか
こんな風に、触れたいと思ったことがあっただろうか。
ない、と思う。
だからこそ、今が特別だった。
そんな人を守りたいとも思った。
それと同時に、独り占めしたいとも思った。
こんな感情、知らないふりをしていたのに。
もう無理だった。
そっと肩を引き寄せる。
強くじゃない。逃げられる余白を残したまま。
それでも、ほとけは離れない。
むしろ、少しだけ寄ってくる。
胸の奥が、静かに満たされていく。
言葉はいらないと思った。
今ここにある温度だけで、全部伝わっている気がした。
出会ったのは画面越しだったのに。
気づけば、こんなにも近くにいる。
画面の光の向こうにいた存在が、今は呼吸の距離にある。
それが奇跡みたいで、少し怖くて、それ以上に嬉しかった。
ただの相方じゃない。
ただの仲間でもない。
触れた指先が、少しだけ強く握り返される。
その瞬間、確信する。
この距離は、偶然じゃない。
選んできた結果だ。
配信者としてじゃなく、一人の人間として。
誰よりも隣にいてほしい人。
夜の静けさの中で、心が静かに決まっていく。
俺は、きっとこの先も。
何度でも、ほとけの隣を選び続ける。
・・・・・・ ・・・❤︎・・・ ・・・・・・・
僕も配信が終わったあとの時間が1番すき。
画面の向こうにいた世界が静かに閉じて、現実の空気だけが残る瞬間。
さっきまで感じていた緊張がほどけて、身体の力がゆっくり抜けていく。
だけど今日は、完全には気が抜けなかった。
理由なんてとっくにわかっている。
いふくんが、すぐ近くにいるから。
同じ部屋にいるだけなのに、空気が少しだけ重くなる。嫌な重さじゃない。
むしろ、安心に似た圧。
自然と足がそっちへ向く。
隣に行く理由なんて考えていない。
ただ、近くにいたかった。
本当にそれだけ
椅子の背に手を置いた瞬間、いふくんの体温が伝わってくる気がして、胸の奥が小さく揺れる。
この距離に慣れてしまったのは、いつからだろう。
配信では絶対に触れない距離。
けれど、二人きりになると、不思議なくらい自然に近づいてしまう。
肩が触れる。
それだけで、呼吸のリズムが少し変わる。
意識しないふりをしているのに、全部感じてしまう。
いふくんの指先が、そっと僕の髪に触れた。
ちょっとだけ整えるような、優しい動き。
驚くより先に、安心が広がった。
拒む理由なんて、最初からなかった。
むしろ、もう少し触れてほしいと思ってしまう自分がいる。
身体を少し預ける。
わざとじゃないふりをしながら。
距離が近くなるほど、心の奥が静かに満たされていく。
こんな風に誰かの隣が落ち着くなんて、知らなかった。
指先が触れる。
偶然のはずなのに、離れない。
触れた部分だけ、温度が上がる。
手を引くこともできたはずなのに、しなかった。
むしろ、少しだけ指を寄せてしまう。
自分でも気付かないくらい、自然に。
いふくんの横顔が近い。
配信中とは違う、静かな表情。
でもどこか柔らかくて、少しだけ疲れていて、それでも綺麗で。
こんな顔を見られるのは、自分だけなのかもしれないと思うと、胸が締め付けられる。
肩を引き寄せられる。
強くない。
でも、確かに選ばれた距離。
逃げ道があるのに、離れる気にならない。
むしろ、もっと近くにいたいと思う。
胸の奥がじんわり熱くなる。
言葉にしなくても伝わる瞬間がある。
今が、そうだった。
呼吸が重なる。
何も起こらないのに、何かが始まっている気がする。
配信者として出会ったはずなのに。
いつの間にか、ただの相方じゃなくなっていた。
触れることがこんなにも安心になるなんて、知らなかった。
指を少しだけ握り返す。
ほんの小さな動き。
でも、心の全部を差し出したみたいな感覚。
夜は静かで、世界が小さくなる。
ここだけが本当の居場所みたいだった。
この距離が壊れないなら、それでいい。
そう思っていたのに。
気付けば、もっとを望んでいる自分がいる。
ただ隣にいるだけじゃなくて。
選ばれた隣でありたい。
光の向こうで出会って、現実で距離を知って。
そして今、触れそうな場所で心が繋がっていく。
いふくんの体温を感じながら、静かに思う。
この先、どんな光の中に立っても。
僕はきっと、何度でも。
_______いふくんの隣を選び続ける。