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若井がいない日。
家の中は、いつもより少し静かだった。
涼ちゃんは朝から動きっぱなしで、洗濯、掃除、買い出し、夕飯の下準備まで全部一人でこなしていた。
「……ふぅ」
最後に流しを片づけ終えたところで、
一気に力が抜ける。
リビングのソファーに腰を下ろしたつもりが、そのまま背中から倒れ込んだ。
目を閉じると、すぐに呼吸が規則正しくなる。
眠ってしまったらしい。
しばらくして。
二階から、元貴が静かに階段を下りてくる。
水を飲もうとして、ふとリビングを見る。
ソファーに横になっている涼ちゃんの姿に、足が止まった。
「……」
近づく音を立てないように、ゆっくりと歩く。
涼ちゃんは眠ったまま。
眉間の力も抜けていて、さっきまでの疲れがそのまま顔に残っている。
元貴は、しばらくその顔を見つめてしまう。
——こんな顔、あんまり見たことなかったな。
そんなことを思って、すぐに視線を逸らす。
何も言わず、近くに置いてあった毛布を手に取る。
起こさないように、そっと肩からかける。
「……無理しすぎ」
小さく呟いて、聞こえないと分かっているのに声を落とす。
それ以上は何もしない。
元貴はそのまま踵を返し、
また静かに階段を上っていった。
二階に戻る途中、
胸の奥に、言葉にできない感情が残ったまま。
リビングでは、
毛布に包まれた涼ちゃんが、変わらず眠っていた。
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