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「どうした?」
「あ〜、なんとなく声を聞きたくなった。そいういえば花は大学卒業でしょ」
「そうだな」
「お父さんご苦労さまでした」
「急に何だ?」
「今まで私たちのせいで自分の人生を費やしてしまったでしょ、今からでも好きにしていいんだよ、誰かいい人がいるなら再婚とかだって」
「お前たちのせいなどと思ったことは無いよ、むしろお前たちがいたから頑張れたし、雪こそ自分の時間を削って家のことをしてくれたおかげでわたしは安心して仕事をすることができた。」
「母さんには会った?」
父のため息がスピーカーから微かに聞こえてきた。
「先月、会ったよ」
「お金?」
「そうだな」
「母さんとやり直したいの?正直、私は母親だと思うことはできないし、花はとくに嫌っているから。でも、お父さんの人生だから、お父さんがやり直したいと思うなら遠慮しなくていいからね」
「彼女のことは綺麗に吹っ切れてるよ、私にとってあの人は知り合いのおばさんとしか思ってない」
「そっか」
「ところで、雪は北山くんと結婚しないのか」
それまで、少し感傷的になっていた気分が一気に冷めてしまった
「体に気をつけてね、それから茂とは別れたから。浮気してた」
「えええええええ」
これ以上話すと、いろいろと説明しないといけなくなりそうなので通話を切った。
母はW不倫をしていた相手にあっさり捨てられ、実家からも勘当されてかなりお金に困っていたようだった。
祖父母には非がないとはいえ、私や花が祖父母と関われば母がそれを利用しそうで、両親が離婚してからは一度も会っていない。
祖父母も母も何度か私たち姉妹へ面会の申し入れをしてきたが私と花の意思で断った。
数年前に母が癌と診断され手術の費用を一部父が負担をしたらしい。
ステージ1の初期で見つかった為、手術をした後は通常の生活を送ってるらしい。
父曰く、困っている知り合いのおばさんを助けたということらしいが、それをもって完全に切り離すつもりが、味をしめた母が時々父にお金の無心にくるそうだ。
父がどういう対応しているのかは聞いてない。
私は独立しているし、それは父の問題だ。
鏡で最終チェックをしてレストルームを出た。