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ピンポーン
???「誰か来ましたね」
???「来たのは紅緒ちゃんだね。何の用だろう?」
ここは、橙の家。ここにいるのは、「紫雲雨花」と「不山橙」である。
紅緒「雨花さん!そして橙さん!」
雨花「どうしたの?紅緒ちゃん」
橙「何か急ぎの用でも?」
紅緒は走ってきたのか、少し息を乱している。
紅緒「お二人に頼みがあるんです!」
雨花「頼みって?」
紅緒「お二人に……」
「「裁判して頂きたい方がいるんです!!」」
雨花「…………」
橙「え?」
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橙「どういうことです?今は、雨花さん不在のため、一時的に雨花さんの裁判の被告人は魂の状態のまま黄泉比良坂の『魂保護所』にて待っている状態ですよね?」
あの世では、担当の裁判官不在の際は、黄泉比良坂にある『魂保護所』という場所で厳重に保護されている。その際は、魂に睡眠の神通力をかけ、そして、『魂保護所』には時間を停止させる神通力が施されているため、魂そのものとして保存されている。しかし、あまり『魂保護所』に行くことは好ましくないとされている。いくら魂そのものとして保存されているとはいえ、魂を待たせてしまうのは良いこととは言えないから。
紅緒「雨花さんが担当する魂の一つに……何と言いましょうか……とても活発的な魂がいるんです。本来睡眠状態の魂は静かなんですが、その魂だけが……寝言が多い……というか……簡単に言ってしまえば…………うるさいんです。」
橙「うるさい?魂がですか?」
雨花「…………」
紅緒「はい。このままだと他の魂に影響が来るかもしれないので雨花さんに……!」
雨花「分かった。やろう。」
橙「そんな!あなたまだ怪我が完治していない負傷者なんですよ?!仕事に行くなんて絶対ダメです!」
雨花「でも、わたしの担当する魂たちにこれ以上負担かけたくないし。魂に影響を及ぼすことがあるなら尚更。この際だから『魂保護所』にいる魂たち全部裁判しちゃおう!」
橙「でm((紅緒「本当ですか!?お願いします!!今冥府てんやわんや状態なので!」
橙「…………」
雨花「よし!やろう!」
雨花は早速準備を始める。服も神通力で着替え、行く気満々。
橙「私も行きます。雨花さんが無茶しないようにみ張らないといけませんから……!」
雨花「あはは!心配ありがとう!じゃあ行こうか!」
「「冥府へ!」」
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ここは、冥府。雨花にとっては久しぶりの(と言っても静養中一度来ているが)場所。雨花はこれから裁判を行う。
紅緒「では、その魂を連れてきます!」
紅緒は、そそくさと走っていった。
橙「どんな方なんでしょうか……」
雨花「…………今のうちに資料をみておこう。」
橙「この方の死因は……、!」
雨花「しかも動機も……面白い子だね。」
橙「どこが面白いんですか!!こんな……」
雨花「橙ちゃん。裁判に私情は持ち込んじゃダメだよ?」
橙「…………」
紅緒「被告人連れてきました」
現れたのは……
???「ちーっす!しゃす!うわお姉ちゃんたちめっちゃ可愛い!!写メ撮らして!」
ギャルの女の子だった。
橙「冥府内では、仕事関係じゃないものは、撮影禁止です。」
???「ちぇっ〜つまんないの〜」
橙「やめてくれますね?」
???「はいはいやめれば良いんでしょ?」
橙「あなたの名前は、光田茜(こうたあかね)さん。年は十八歳。家族構成は父、母、妹の四人家族。……で間違いないですね?」
茜「そうそう〜」
茜は、つけ爪をいじりながら適当に相槌を打っている。
橙「そして……あなたの死因は……」
「「自殺ですね」」
茜「そうなのよ〜ワタシ自殺したんだ〜きゃはは!」
橙「……!あなた!何をそんなあっけらかn」
雨花「橙ちゃんストップ」
茜「あのさぁ?そういう腐れ説教とかききたくて死んだ訳じゃないんだよね〜」
雨花「なぜ自殺を?」
茜「え?別に生きるのめんどいなぁと想って〜ほら、大人になったら働かなきゃでしょ?自由に何も出来ないじゃん?子供でいるうちが華なんだよ〜!だから目一杯楽しんだら死のうかなって〜特に深い意味はないでーす!虐待もないし、学校で何かあった訳でもないし〜」
雨花「では、あなたの利き手じゃない方をみさせて頂きますね。」
茜「え?何でよ」
雨花「裁判に必要なんです。ご協力を。」
雨花は優しく笑っている。
茜「まぁいいや。どうぞ〜」
茜は手を差し出す。
雨花「…………」
雨花は、しばらく黙ってみていると、ふっと笑い出した。
雨花「あはははは!あなた面白い人だね!自分の命を完全に自分のものだと自覚してる。それって中々できることじゃないよ!すごいね!自己的で実に人間らしい!」
橙「雨花さん!何言ってるんですか!この方は特に辛い想いをした訳じゃないのに自分の命を捨てたんですよ!?自分の命をなんだと想ってるんですか?!」
茜「えぇ〜辛い想いをしなきゃ自殺しちゃいけないの?そんなの一体誰が決めたの〜よ」
茜は、橙の花をちょんちょんする。
橙「やめてください。……一体何が面白いんですか?雨花さん。」
雨花は、二人に向き直ってこう言い放した。
雨花「本来人間は自分の命を自分のものだと自覚すべきなんだよ。自分の命をどうしようが自分の勝手。自分の責任。でも人間は何かと、例えば「家族が心配する」「友達が悲しむ」とか理由を付けるなり、付けられるなりして、自分の命の権利を無意識に他人に讓渡してる。そういう人が多いから、「自殺」というものを考えても実行できない人が多い。……わたしたちみたいに実行”できちゃった”人もいるけど。まぁだから「自分の命は自分のもの」と自覚しきってる人はいるようで結構少ないんだよ。でも、茜さんはそれができてる!あなたはとても面白い人だ!」
雨花は目をキラキラさせて茜をみる。
茜「ワタシてっきり、「命を何だと想ってるんだ」とか罵倒されると想ってたけど、あんたも面白い奴ね?」
雨花「えぇ〜そうかな?」
二人は笑いあっている。
橙「…………」
雨花さんも自分の命は自分のものと自覚しきっているのだろうか
雨花「さてと、茜さん。あの世の法律では自死した者は、あの世で働くということになっています。だから茜さんも働いて貰います。」
茜「えぇ〜マジで〜?」
雨花「マジで〜です」
茜「まぁ雨っちがそういうならそうするわ。あんがと〜」
茜は紅緒に連れられて仕事案内に向かったのだった。
雨花「よし!次の裁判に移ろう!」
橙「雨花さん」
雨花「ん?」
橙「雨花さんの命は確かに雨花さんのものですし、好きにしたら良いと私も想います。」
「でも、」と橙が一つ離して話す。
橙「雨花さんに消えて欲しくないと想うのも自由ですよね?雨花さんにとっては嫌なことかもしれないけれど、雨花さんが自分の命を自分のものだと想い続けるなら私、いえ、私たちだって雨花さんに消えて欲しくないと想い続けます。それくらいは良いですよね?」
雨花「…………」
雨花はしばらく黙ると、
雨花「わたしから言えるのは一つだけだよ」
「止められるものなら止めてみなよ」
橙「……はい!」
こうして、雨花と橙は、残っていた裁判を全て終わらせ、帰って行った。