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梅雨も終わり、そろそろ期末テストに向けて小言が多い先生の話が長くなるような頃、日差しが強い窓際の席は少し辛かった。
エアコンもつき始めたが、太陽の偉大さとはこういうことか、ジリジリと焼ける左腕は少し色を深めている。
顔だけは日焼け止めを塗っているので被害はほぼないが、塗っていなかったら夏の終わりには左から右にかけてグラデーションで色付いていたかもしれない。
「なあ名雪って今年お盆どうすんの?」
坊主頭が眩しい、サボり部こと文芸部所属の加賀が何かを期待して問いかけてくる。
去年は同じクラスだった加賀と佐藤、それと今年は別クラスになったが楠木という三人を、俺の父の実家に泊めて勉強合宿(という名の夏休みエンジョイ旅行)を楽しんだのだ。
そんなに我が家の祖父母の家が楽しかったか。俺も楽しかった。
田舎は田舎だが、イオンなどの商業施設はあるし、もちろん山も川もしっかりある。
いわゆる丁度いい田舎というやつで、小さい頃俺もじいちゃん家に行く事になる度、冬でも水着を突っ込もうとした。
冬にはその水着が活躍しなくとも、夏に行けば毎日のように川遊び、山遊び、液晶画面漬けになっている現代っ子たちには新鮮で最高に楽しい遊びだ。
去年の合宿では宿題は思うように進まずとも、提出が義務付けられていない先生のイカす遊び心である日記帳は、たくさん埋まった。
今年もそれをやりたいのか、いや、楽しかったんだけど。今年も友達同士でバカをやって遊びたいんだけど。
「いや、今年はちょっと確認せんとわからないかも。」
「や、そっか。去年楽しかったな〜。」
「気持ちはわかるのだがどうにもならないこともあるのだよ。」
「そこをなんとか、よろしくっすよ名雪氏!」
簡単に物を言ってくれる。
会話もそこそこに、今日も帰宅部はさっさと帰宅に勤しむ。
友人たちにも一応伝えてはあるが、今年度は親の再婚で色々面倒なこともある。
それを汲んでなんとも遠回しに「今年も泊まりに行きたいな〜」を伝えてきたのだろうが、問題は一つだけなのだ。
「おかえり!ねえ美鶴、今日の授業中さ、なんかめっちゃ目細めてたよね、あれ寝てた?」
「眩しかっただけだよバカ。」
コイツだ。
こう言っては少々聞こえが悪いが、こいつと兄弟になったことはバレたくない。
変人と兄弟な事により避けたりする奴は俺の友人にいないが、絶対ウザ絡みされるし学校でもシシルを引っ張り出して、そこからクラスにバレそうだ。
そもそもだが俺はなぜシシルと兄弟だとバレたくないのか。
それは単純。コイツが好きじゃないから。
好きだったら元々すぐに友人になるだろうし、兄弟になったら自分から公言する。
だがコイツのことは元々嫌いだったので友人じゃなかった。
意味不明な行動をする奴は怖くて、近付いたら害がある。
知らないは、何者にも勝る恐怖で、俺は『知る』という勇気のある行動に出るほど人生経験を積んでいる人間ではなかった。
そういう単純な話。
「なあ行野……」
「ン?」
「……いやなんでもない。」
何か策は見つからないかと口を開いて、すぐに閉じた。しかし考えていてもしょうがない。
あと少なくとも一年半は一緒に生活する中だ。
一個ずつコイツのことも知って行かないといけないのはわかっていたから、いいきっかけと思えばいい。
腹を括り、今度こそ口を開く。
「お盆の帰省、俺の友達も一緒だと思う。」
「えっ」
ばさり……
持っていたノートを落っことして口を開いたまま固まるシシルは、まさに『絶望』といった顔をしていた。
「ね、ねえ美鶴くん。」
縋るような目で俺を見つめるシシルは泣きそうな声で言う。
「俺のこと、守ってくれる?」
そうか、コイツもコイツで俺の3U(うるさい・ウザ絡み・胡散臭い)を持った 友人にバレたくないんだ。
そうだよな、お前、加賀と同じだったグループ学習の時なんて抜け殻みたいだったし。
クレープ店で生クリームチョコクレープ(550円)を汗かきながら食べていたシシルを思い出しながら、愛想笑いで誤魔化した。
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爪切りです。
これまで、これからの話は、私が気付き次第誤字脱字、言い回しなどの修正を入れています。
話の筋に関わってくる修正はないのですが、「アレっちょっとここ変わってる?」と思っても優しく見守って欲しくてお知らせします。
あと今度(いつか)美鶴とシシルのキャラデザ描こうと思っています。