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今回はタクミくんを闇に引きずり込んだ雨宮理久さんのカコです
ボクは、生まれたときは光の側の人間だった。
少なくとも、そう教えられて育った。
神谷くんとは、物心つく前から一緒だった。
彼は生まれたときから闇の側だった。
感情の波が薄く、人に合わせる気もなく、子どもたちから浮いていた。
だから、いじめられていた。
ボクは止めた。
止めたかった。
でも子どもだったボクにできることは限られていた。止めても止めても、翌日には同じことが繰り返される。
新任の桜庭先生が来たのは、その頃だった。
先生は光の側の人だった。
神谷くんを「闇だから」ではなく、「神谷くん」として扱った。
ボクは、その姿に憧れた。
光は強い。光は世界を変えられる。
本気でそう思った。
それでも、神谷くんは変わらなかった。
世界との距離は縮まらず、どこか冷めたままだった。
でも、ボクだけは彼のそばにいた。
「雨宮くんは光すぎる」
神谷くんはよくそう言った。
中学を卒業するころ、ボクは自分が光だと疑わなかった。
桜庭先生みたいになりたいと思っていた。
高校で、神谷くんとは別々の道に進んだ。
連絡は取っていたが、彼は少しずつ“あちら側”に近づいていった。
止めるべきだった。
でも止めなかった。
闇に生まれた人間は闇に行く。それは仕方ないことだと、どこかで諦めていた。
大学生になった頃、神谷くんは仕事の話をした。
法に触れるが、裏側では必要とされる役割。
光の側には触れられない世界。
ボクは拒んだ。
自分は光でいたい。
桜庭先生のようでいたい。
そのとき、神谷くんは言った。
「君が光でいたいなら、光だけ見てればいい。 僕は影を見る」
その言葉が、ボクの中で何かを壊した。
影を見ない光は、本当に光なんだろうか。
ただ知らないだけじゃないか。
ボクは、そう思ってしまった。
二十歳を過ぎたころ、ボクは闇の機関に入った。
神谷くんの紹介だった。
戻れる道はあった。でも戻らなかった。
闇は、思っていたより秩序立っていた。
無秩序な悪ではなく、役割と論理のある世界だった。
必要悪という言葉が、妙に現実的だった。
ボクは、そこに居場所を見つけた。
数年後、ボクは「勧誘」を任されるようになった。
光にいるのに居場所を見失っている人間を見つけ、声をかける役割。
向いている、と言われた。
説得が上手い。相手の孤独を見抜くのが上手い。
自分が通ってきた道だからだ。
勧誘は、いつも簡単だった。
「こちら側」の理屈を説明し、戻れないことを伝え、それでも選ばせる。
逃げ場を提示しながら、逃げ場がないことを理解させる。
それでも人は来る。
光に疲れた人間ほど、影に居場所を求める。
カフェでタクミに出会ったとき、ボクはすぐに分かった。
彼は、こちら側に来る人間だ。
光にいながら、光に居場所を見つけられない目をしていた。
だから声をかけた。
いつも通りの手順で、いつも通りの言葉で。
それが救いか堕落か、もう分からない。
ただ、ボクは知っている。
一度影を見た光は、もう影を見ないふりはできない。
そして、影に来た人間は、二度と元には戻れない。
ボクはそれを理解した上で、今日も誰かに声をかけている。