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俺は竜牙さんの黒いTシャツの裾に手をかけ、ゆっくりと上に脱がせようとする。
肌が触れ合うたびに
竜牙さんの体は驚くほど熱くなって、俺の愛撫にちゃんと敏感に反応してくれる。
なのに────
いつも通り、行為の前に部屋の電気を消そうと伸ばされた竜牙さんの大きな手を
俺は先回りしてぎゅっと掴んで止めた。
「今日は……電気、つけたままにしない?」
重なり合っていた竜牙さんの動きが、嘘みたいにピタリと止まる。
「……慧斗」
「だって、竜牙さんの顔見たいんだもん」
「暗くても……これだけ近ければ、見えてるだろ」
「見えない。もっと、ちゃんと全部見たい。竜牙さんがどんな顔して気持ちよくなってるのか、見たいの」
懇願するように見つめると、竜牙さんは本当に困ったように
そして酷く気まずそうに、ふいっと視線を斜め下に逸らした。
その、拒絶を孕んだ反応に、俺の胸の奥が冷たいものでざわつき始める。
なんで?なんでそんなに嫌がるの?
恥ずかしがっているだけのレベルじゃない。
「……恥ずいんだよ、お前みたいな綺麗な奴に、こんなの見せるの」
「何が恥ずかしいの」
「色々だ、色々」
「だから、その『色々』って何なのか教えてよ」
少し声を荒らげて聞き返しても、竜牙さんは決して答えようとはしなかった。
ただ、酷く押し黙ったまま、「……消すぞ」と低い声で呟き
俺の手を優しく振り払って、壁のスイッチへと再び手を伸ばす。
パチン、と冷たい音がして、部屋が一瞬で完全な暗闇に包まれた。
その瞬間
俺の中で、ぷつっと、何かが酷く冷たい音を立てて切れた。
(……あ、そんなに嫌なんだ)
そこまで頑なに拒むほど、俺に自分の体を見せられるのが嫌なんだ。
そう思ったら、悲しさを通り越して、急に激しい怒りと虚しさが込み上げてきた。
寂しいとかいう可愛い感情じゃない。
まるで、一番近くにいるはずの恋人に
徹底的に「拒絶」されたような、冷たい痛みが胸を支配する。
「……もういい」
俺が低く、感情の消えた声で言うと
暗闇の中で竜牙さんがハッとしたように息を呑む気配がした。
だけど俺は、重ねようとしていた彼の体を容赦なく押し返し
そのまま竜牙さんから距離を置いてコロンと背を向けた。
「慧斗……?」
「したくない。気分乗らなくなっちゃった」
「…っ」
一気にベッドの上の空気が氷点下まで冷え込んでいく。
竜牙さんは、暗闇の中で何かを言いかけるように何度も気配を揺らしていた。
だけど、彼は結局何も言わなかった。
何も言ってくれないその弱気な態度を見ていると
余計にイライラと悲しさがぐちゃぐちゃに混ざり合って、胸の奥が痛い。
なんで言ってくれないの?
なんでそんなに隠すの?
俺って、そんなに信用ない?
そんなに頼りない恋人なのかな。
ぐちゃぐちゃした思考で頭が破裂しそうになりながら、俺は涙を堪えるようにギュッと目を閉じ
布団を頭まで被って潜り込んだ。
それから、どれくらいの時間が経っただろう。
静まり返った寝室で、少しだけベッドが沈み
後ろから遠慮がちに、壊れ物を扱うような優しい力で俺の体が抱きしめられた。
「……悪い、慧斗」
背中に触れる、切ないほどに低い声。
俺を愛おしそうにつなぎ止めようとする、大きくて温かい手。
それなのに。
今の俺には、苦しくて仕方がなかった。
#スパダリ