…月日は流れ、遥香は5年生になっていた。
今日は日曜日で天気も良かったので、3人で出掛ける事にした。
「遥香、何処か行きたい所はあるか?」
「小学校に忘れ物をしたから散歩しながら歩いて行きたい」
すると遥香から意外な答えが返ってきた。
それから僕たちは支度を済ませると、3人で散歩しながら小学校に向けて歩き出した。
僕等が住んでるアパートは実家から近く、遥香の通学路は僕が使っていたルートと殆んど同じだった。
「パパ…ママと2人でこの道を歩いた事あるんでしょ?」
「遥香が産まれる前に、ママが歩きたいって言ったから歩いたんだ…」
「石蹴りと石投げしたの憶えてる?」
「もちろんだよ。ママは石蹴り下手くそだったけどね」
「その時、ママを怒らせたでしょ?」
「そう、そう。怒って僕に石を投げつけようとしたんだ」
キィ―――――ン……
耳鳴りと頭痛が僕等を襲った。
コツンっ…
それと同時に僕の靴に何か固い物があたった。
えっ!?
足元には見覚えのある石が転がっていた。
僕はそれを手に取った。
「パパ、憶えてる?」
「あぁ…信じられないけど、これはママが僕に投げつけようとした石だよ」
その石には、あの時葵が貼ったキャラクターのシールがついていた。
「紺野くん、後ろを見て」
裏側に何か文字が書かれてる事に気付いた遠藤さんは、石を指さした。
石を裏返してみるとそこには…‥
【瑛太の意地悪。でも大好きっ】
そう書かれていた。
「パパ、何て書いてあるの?」
「教える訳ないだろ。ママからパパへの大切なメッセージなんだから」
「ふ~ん、いいよ~だ」
「ふてくされるなって」
「バパの意地悪。でも大好きっ」
遥香は、そう言うと僕の腕にしがみついてきた。
「・・・・・」
「は~ちゃんには、隠し事は出来ないわね」
「えぇ…」
そして数分かけて学校まで歩いた。
校門はあの時のように開いていた。
「日曜日だから校舎の中には入れないんじゃないの?」
「大丈夫だよ。パパがママと来た時と同じだよ」
同じって?
あの時は、昔お世話になった島崎先生がいて、それで校舎の中に入れてもらえた。
「よっ紺野、久しぶりだな」
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