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最近、若井がちょっと変だ。
そういうと元貴はいつもじゃん、って適当に言って笑ったあとにまぁ変だねって同意してくれた。
「若井、なに飲む〜?」
炭酸、ジュース、珈琲、紅茶···スタッフさんがたくさん用意してくれたのを見比べて若井の顔を見ると難しい顔をしている。
「りょ、りょっ···」
「りょ?緑茶はなさそう、ウーロン茶ならあるけど買ってこようか?」
「···ううん、ジュースにする」
「そう?はい、どーぞ」
ありがとう···といいながらも若井はまだ難しい顔をしている。
そんなに緑茶が欲しかったのかな?
次はスタッフさんにお願いしておこう。
お弁当の時も若井はまた難しい顔をしていた。
「鮭弁当と···ハンバーグ!若井はどっち?」
「りょ···りょう···」
「んー?なんて?」
「···りょうほう···」
「あ、どっちも?2コ食べる?それとも良かったら半分する?」
「···はんぶんこ、する」
半分こだって、可愛い。
いつもは俺これ!みたいにパッと決めるのに珍しい。
お腹空いてたのかなって僕はハンバーグをたくさん若井のお弁当に移してあげた。
けどやっぱり変だよね?
最近なんか言いかけて、やめるみたいなモゴモゴ困った顔してることが割とある。
2人きりのときは普通だからどうしたのかちょっと心配だから気にしてあげようと思う。
「あの、りょ···うちゃん?」
「ん?どしたの?」
「俺さ、一緒に行きたいところがあって」
「うんうん、どこ?」
「サウナ···だめ?」
めちゃくちゃ意外だった。
僕は割と好きで良く行っているけど元貴なんかは熱いの苦手だし、若井も前に苦手だと言ってたから誘うことは無かったから。
「けど、平気?昔、苦手って言ってた気が···」
「たぶん···行ってみたい、だめ?」
「うれしいよ、じゃあ僕がいつも行くところに一緒にいこ?」
若井はにこにこって笑顔で喜んでくれた。若井が笑ってると僕も嬉しくなる。カッコいいけど、甘えるような仕草やそういうお願い事をしてくれる時にに見せる笑顔は特に可愛いから。
たまたますぐに2人の予定があって予約していたサウナに連れて行ってあげる事ができた。
「プライベート感あっていいでしょ?他の人と一緒じゃないから気を使わないし。はい、これ服」
「···ここに、永瀬さんとも来るの?」
「廉くん?うん、まぁ来たこともあったかな」
「そっか···あ、服着て入れるんだ」
貸し出してくれるTシャツハーフパンツに着替えてサウナに入る。
「うん、裸とか水着でも良いみたいだけどね?僕はいつもこれ着るから···ほとんど初めてだと思うから無理しないでね?早めに出ててもいいし、休憩できるから」
「ありがとう、わかった」
少し入って、水浴びて、を繰り返して少し長めにサウナに入っていると若井が少し苦しそうで赤い頬を撫でた。
こんな時になんだけど汗かいてTシャツもぴったりくっついてちょっと色っぽくて困る···とか思ってる場合じゃないくらい息も早い。
「若井、1回休んで?無理しちゃダメだよ」
「んー、平気···まだ一緒にいる」
「じゃあ僕も出るから!ね、また来たらいいし」
「やだ、せっかく連れて来てくれたのに···俺だって、来たかったから···」
そういいがらも若井はふらり、と座ったまま僕にもたれかかった。
「ちょっ···つかまって、出るよ!」
「ごめん···」
外に出て温めのシャワーをかけて水飲んでクールダウンしていると落ち着いたみたいで服を着せてタクシーを呼び家に連れて帰る。
「どう?気持ち悪くない?もっと水分取ってね」
若井は綺麗にシャワーをしてあげたけど慌てた僕はほとんど拭いただけだになってしまったのでお風呂に入り直して、ベッドで横になる若井の頭を撫でた。
顔色もいいし、落ち着いてるから良かったとほっとしてその隣に潜り込む。
「ごめん···」
「ううん、いきなり暑かったね、ごめんね。若井には岩盤浴とかもっとゆっくりあったかいのがいいかも、普通に温泉とか···ってえっ?どうしたの?どこか痛い?」
ぐす、くすん、と聞こえて若井の目から涙が溢れる。
「だって、りょうちゃん他の人とサウナいっちゃうじゃん···そんなの知らなくて···俺だって、って···」
「え···それで、サウナ?」
「そうだよ!それに他の人に涼架、って呼ばれてて···なんか寂しかった。俺だって堂々と呼びたいけどいきなり呼んだら変かなって。そ、それに恥ずかしいし」
「···それで変だったんだ」
「ごめん、本当はグズグズ言うつもりなかったし行くの辞めてほしいとかじゃないし浮気とか心配してるわけでもなくて···ウザいよね、こんなのヤキモチ焼いて」
そういうと布団を頭まで引っ張って隠れてしまった。
いつも友達や知り合いが多くてフレンドリーでみんな若井といると楽しそうで、そんな彼が僕に泣いちゃうほど嫉妬してくれるなんて。
バカだなぁ、若井は。
ウザい?そんなわけないだろ。
「世界一可愛いけど」
「···なにが」
「滉斗が。好きな人が僕のこと思って泣くほど嫉妬してくれるなんてね?ヤバいくらい可愛い」
布団を引っ張ってその赤くなった顔にキスをする。
「ん···ごめんね、サウナ···」
「そんなのどうでもいいよ、行きたいって言ってくれただけで嬉しかったよ。けど無理しなくていい。僕は若井が一緒に居てくれたらそれだけで幸せだし···今も、ね」
「りょうか···俺も。あの、す、する?その···用意とか」
キスを深く続ける僕に恥ずかしそうに聞く若井を強く抱きしめる。
「さっきまでふらふらしてたのにしないよ。若井とするのは好きだけどこうしてるだけで幸せだから」
「涼架、好き···大好き」
しっかりしがみついてくる若井が可愛くって仕方ない。
ここ最近変だったのはモヤモヤ悩んで、どうしようって考えて、きっと僕のことばっかり考えてたんだ。
すぅ、と腕の中から小さな寝息が聞こえてそっとその涙のあとを指でなぞる。
ほんっとにね、こんなに真っすぐに僕のこと好きでいてくれるなんて···改めて真っすぐに愛してあげないといけないって感じる。
「けど泣き顔も可愛いからね、たまに泣かせたくなっちゃうなぁ···」
ふざけてるときも、真剣な時も、笑顔も。 どれもが僕を惹きつける。
きっとこれが“愛おしい”ってことなんだろうな、なんて考えて僕も眠りについた。
翌日、昨日泣いてしまったことが恥ずかしかったのか少し照れた若井に僕は嫌ってほど可愛い、大好きと伝えた。
「ちゃんとわかった?僕が好きなのはギターが上手くて歌も上手で可愛くて実はヤキモチ焼きなひとだって」
「···ちゃんとわかった」
嬉しそうな表情に僕も嬉しくて、そっとタクシーの中でバレないように手を繋いだ。
「おはよう、りょうちゃんー、若井も。なになに、一緒にきたの?お泊り?」
「···いいだろ、別にっ」
ついた早々にからかわれて若井は照れてけらけら笑う元貴を見ずにギターの用意をしている。
周りはスタッフさんもいてあれこれと準備が進んでいた。
「もう、あんまりからかわないでよね、滉斗を」
元貴は一瞬おや、という顔をしてからさっきよりニマニマと笑顔になって若井はびっくりした顔でこっちを見ていた。
「さぁー、今日も頑張ろうね。ねぇ、滉斗?」
僕はあえてはっきりと名前を呼ぶ、皆の前で、堂々と。
スタッフさんの少し驚いた表情も、元貴がとにかく笑顔でこっちを見ているのも、耳まで真っ赤になった滉斗の表情も···その全てが心地よくて、僕はその日はしっかりと何度も滉斗、と名前を呼んだ。
ねぇ、滉斗。
ちゃんと感じてよ、僕の愛。
コメント
14件
尊い⋯⋯可愛すぎる💘

他の人からの名前(しかもあだ名)呼びにやきもち妬いた当の本人(若井さん)に名前(しかも呼び捨て)呼びする涼ちゃん、ずるい男すぎる
初コメ失礼します。 もう可愛すぎて愛くるしくて、、いつもこっそり拝見させて頂いてたのですが、ちょっとあまりのかわいさに窒息してます。 いつも優しいおはなしをありがとうございます。