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「雪…く、ん……?」

朝起きると、掛け布団の上に冷たい物体が転がっていた。

それは、僕が愛した雪くんだった。でも、もう雪くんじゃないっぽい。

「雪くん!!!!……あ゙ぁあああ!!!!」

雪くんが涙で濡れてしまうくらいに、泣いた。

どうして雪くんがこんな姿にならなければいけないんだ。

ふとドアの方に視線を移すと、雪くんが好きだったカリカリのご飯がある。

こんなところに落ちて、と思ったが、よく見るとドアの向こう側にも続いている。まるで僕を導いているようだった。

僕は冷たくなった雪くんを抱いて、ご飯を一粒づつ拾いながら歩く。

僕の手元にどんどんご飯が増えていく。

ご飯が続いていた先には、信じられない光景が広がっていた。

「なんだ、これ………。」

そこには、雪くんが愛用していたものや大好きだったおやつ、僕の使っていたスリッパなど、雪くんの宝物が山のように積まれていた。

これが、雪くんの最期のメッセージだと悟ってしまった僕は、脱水症状になるくらい、泣いた。雪くんと一緒に。


ネットで調べると、猫は最期に恩返しをするそう。

ちょっとしたドッキリだという。けれど、雪くんのは盛大なドッキリだった。

僕への愛が感じられて、あの山を見るたび涙が止まらなくなってしまう。

雪くんが亡くなってから1週間が経った今でも、あの山は崩せないでいる。

毎日、仕事を休んで泣いてしまう。雪くんの写真を見ては泣いてしまう。

「ごめん、雪くん………。ごめんね、長生きさせてあげられなくって……。」

普段全く写真を撮らない僕だが、スマホのフォルダいっぱいに雪くんの写真がある。ブレてよく見えないものでも、消すのを戸惑ってしまう。

家族を失うということは、こんなにも寂しいことなんて知らなかった。

猫は、どうしてこんなにも寿命が短いのか……。

僕より雪くんの方が年下なはずなのに、雪くんの方が先に虹の橋へ渡ってしまった。

部屋の中に雪くんの毛が舞うことはないし、鳴き声も鈴の音も聞こえることはない。たまにされたいたずらも、もうされることはない。

でも、雪くんの事を想うたびに心が暖かくなる。

こんなにも雪くんに影響されて、これから雪くんがいない日々を、僕は生きていけるだろうか。

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