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第6話:最初のキック(胎動)と、命の対話
妊娠六ヶ月のある日の夜。私たちはベッドに入り、カイザーが後ろから私を包み込むようにして横になっていた。部屋の明かりを消し、静寂が満ちる中、彼の手は自然と私のお腹の上に置かれていた。その時だった。私のお腹の奥で、『ぽこん』と小さな、けれど確実に何かが内側から皮膚を押し上げるような振動が走った。
「あ……」
「どうした、ネス。どこか痛むのか? 病院へ行くか?」
カイザーの声が瞬時に緊張を帯びる。
「うううん、違うの。ミヒャ、ここ、手を当ててみて。じっとして、集中しててね」
私は彼の手を引き、私のお腹の少し下あたり、今さっき振動があった場所に誘導した。カイザーはまるで爆弾の解体でもするかのような、一瞬の呼吸すら忘れた緊張した面持ちで、大きな手のひらを私の肌に密着させた。
数十秒の、息が詰まるような沈黙。そして再び、内部から『ぽこん! ぽこぽこ!』と、今度はさっきよりも力強い蹴りが、カイザーの手のひらに直接伝わった。
「……動いた。今、確かに、俺の手に触れたぞ。この中で、本当に生きている……!」
カイザーの瞳が驚きで大きく見開かれた。その青い瞳が、歓喜で細かく震えている。次の瞬間、彼は私の背中から回り込み、お腹の正面に顔を近づけると、直接肌に唇を寄せるようにして耳をぴったりと押し当てた。彼の美しい金髪が私の脇腹をくすぐり、思わずクスリと笑ってしまう。
(私の中に、もう一つ別の意志がある。それがカイを驚かせ、彼の表情をこんなにも柔らかく、愛おしげに変えている。この小さな命が、私たちの未来をどんどん変えていくんだ……)
「おい、聞こえるか? 俺が父親のミヒャエル・カイザーだ。お前が外に出てきたら、世界で一番美しい景色を、最高の王座をたくさん見せてやる。だから安心して、母親をこれ以上苦しめずに育ちやがれ」
「 ふふ、お腹の中からそんなに圧をかけないでよ、ミヒャ。怯えちゃうよ?」
「当然だ。俺の遺伝子を継ぐんだ、凡才なわけがない。だが……何よりも、お前に似て優しい、俺を世界一愛してくれる子になってほしい。俺のライバルが増えるのは癪だがな」
カイザーは顔を上げ、私の唇に深々と、お互いの呼吸が完全に混ざり合うほどの熱いキスをした。
「お前を愛しているのと同じくらい、この子のことも愛している。ネス、お前が俺の隣にいてくれるから、俺は父親になれる。俺たちの家族が、どんどん形になっていくのが愛おしくてたまらないんだ」
彼の言葉には、ピッチの上の傲慢さは微塵もなく、ただ純粋な愛と、父親としての柔らかな熱だけが満ちていた。私は彼の手を握り返し、幸せな涙を静かに流した。
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