“何か”とは。
“何か”を親しくしてくれる人間、友達。
霊夢の実の母親は霊夢が物心ついた頃に捨てた。
物心がついた子供を捨てて恐怖を脳内に染み付ける。
雨の中、知らない街で呆然と立っている幼い霊夢。
そんな霊夢の瞳から大きな粒が流れ、雨のように止まらなくなる。
そんな霊夢を抱きしめたのは霊香だった。
霊香は霊夢を神社につれてかえり、ことの経緯をきくと、怒りに震えた。
なぜ、そんなひどい母親がいるのだろう、と。
霊香は霊夢を育てることに決めた。
自分の名前からとり、名前を“高橋かな”から“博麗霊夢”に変えた。
『霊夢に、これ以上悲しい思いをさせたくない。
ねぇ、紫。霊夢に言っておいて。
お母さんは、長い旅に出かけたって。』
霊香は八雲紫に頼み込み、息を引き取った。
『霊夢』
これが最後の言葉だった。
だが、その場に霊夢はいたのだ。
お母さんに会いたくてついてきた、ただそれだけの事が、霊夢のトラウマとなった。
まだ、霊香と過ごして2年。そんな短い年月。
それでも、霊香は実の娘のように霊夢を愛し、霊夢は霊香を実の母親のように心を開いた。
それなのに。
霊夢は“母親”を、“心を開ける人”を失う悲しみを二度経験している。
霊夢は怖くなり、神社に閉じこもった。
狛犬のあうん、紫。
この2人に心を許し、霧雨の魔女関係の人には心を許さない。
それが、“博麗霊夢”の生き方。
生涯、それを貫くつもりだったのだが。
霧雨魔理沙。彼女のせいで、霊夢の生き方は大きく傾いた。