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【5話】魔法探検祭から数日後。 くらげと海星は、自然と一緒に過ごす時間が増えていた。
授業も休み時間も、気づけば隣にいる――そんな日々。
「くらげ、髪に花びらついてる」
中庭で魔法薬の課題をしていたとき、海星がふと手を伸ばす。
指先が頬をかすめ、くらげはくすぐったそうに笑った。
「ありがとう、海星くん」
花びらを取った彼の手が、ほんの少しだけ離れずに止まる。
海星は一瞬だけ迷い、結局何も言わずに手を離した。
◇◇◇
放課後、魔法商店街で食べ歩き。
くらげは嬉しそうに蜂蜜パイを頬張っていたが、口元にクリームがついている。
「……ほら」
海星がハンカチでそっと拭ってやると、くらげは「えへへ」と笑い、また一口食べる。
「……君って、本当に油断ならない」
「え? パイのこと?」
「……いや、違う」
海星は小さくため息をつきながらも、どこか幸せそうだった。
◇◇◇
その夜、寮の廊下ですれ違うと、くらげがそっと声をかける。
「海星くん、今日もありがとう。私ね、海星くんといるとすっごく楽しい」
海星は返事の代わりに、くらげの頭をぽん、と軽く叩いた。
「……俺もだ」
それだけで、くらげはまたにっこり笑う。
二人の間には、魔法よりも温かい空気が流れていた。