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「火の精霊よ!」
剣を構えつつ、ルードが火の魔法を矢のように狼達へと射る。
すべて、狼の額中心部に向かった火の矢は何の音もたてずに狼達を通過して消えた。
「ミストウルフ、水の魔物ですね」
「じゃあ、こっちがスペードの言ってた魔物?」
「かもしれません」
数がどんどん増えてきて、まわりを囲まれていく。
どうしよう、私、木の魔法は使えないし……。
「木の精霊よ!」
ルードが叫び、辺りの木々から枝や根が伸びる。
狼の足を捕らえ、そのまま包み込むが、数が多く対応しきれていない。
次々に来る狼に私達は防戦一方だった。
「――つっ!」
「ルードさん!」
一匹の狼の牙が、ルードの左腕を水の結界ごと引き裂いた。
「ウォータ!」
すぐにはり直したが、ルードの様子がおかしい。
彼は、噛まれた腕を押さえ、片膝をついている。表情が、苦しそうだ。
「ライト!」
私達を囲うように大きな結界をはる。
「大丈夫ですか?!」
狼達は、光の結界にぶつかってくるが手が出せないのがわかったのか、結界ギリギリで何匹も何匹も集まり牙や爪を剥き出し、こちらを見ている。
このままじゃ……。
「こっちだよ」
え……?
「こっち。そいつらが入れないように結界をはってるから。こっちにきて」
葉っぱの道の先から声が聞こえる。
「ライト」
ルードの腕の傷を癒し、歩けるか問う。顔色が悪い気がする。
「大丈夫です」
「こっちって、誰かが」
移動出来るように、光の結界の命令を変えて、私達は声のする場所に向かう。
大きな木と隣り合わせに家が一軒建っていた。あれ、ライトコールで見たものと似てる? あれが大魔法使いの家なのかな。
板塀に囲われた、その家は一ヶ所だけ人が通れる場所がある。
こんな森の中なのに、手入れが行き届いているようで新品のようにピカピカだ。
「こっちこっち」
声がそこに誘う。私達はその入り口にむかう。通り抜けようとすると、前方でうろうろしていた狼が一匹、二匹と離れていく。
本当に何か結界が?
木製アーチをくぐり抜けると、狼はそこからはついて来なくなった。
「助かった?」
「よかっ……」
バサッ
ルードが喋り終わる前に座り込み、そのまま倒れた。
「ルードさん!?」
「にゃぁ」
猫アリスがルードに近付いて左腕の怪我をしたところを見ている。怪我は治っているけれど。
「黒い髪のお兄さんは過去幻影の花の毒にやられたのかな。あれはミストウルフの爪や牙にたっぷりついているからね」
誰かわからないこの声の主を探すが見つからない。
「あの、どうしたらいいかわかりますか?」
「…………」
「教えて下さい!」
「…………、まずはくっついてる花粉や胞子をそこの出入り口から森に戻して、結界をといてくれるかな」
風の魔法……。どうしよう。シルフィは私の言うこと聞いてくれないし……。
「いいよ、呼んで?」
「は?」
「うん、おいらの名前」
シルフィの声がした。えっと、信じていいかな。
「シルフィ!」
ビュゥと風が巻き起こり私達のまわりを撫でて柵の向こうへと運んでいく。
「出来た…………」
ククククと笑い声が響く。気まぐれなのには変わりはなさそう。
「ありがとう、シルフィ」
クククと笑い続けている彼はひとまず置いておいて、私は結界をといた。
「こっちに連れてきて」
今度は家の中から声がする。お邪魔して大丈夫なのかな?
あ、待って。ルードって、私運べるのかな……。
コメント
1件
うわ、ミストウルフに囲まれてルードまで毒で倒れちゃうなんて…💦 でも「こっちだよ」って声がしたタイミング、めっちゃ助かるやつ!そしてシルフィ、急に協力的になったのちょっと可愛かったですね。「ククク」笑いながらも呼べば応えてくれる、気まぐれな距離感が精霊らしくて好きです。ルードを運べるのか?って終わり方も気になる〜次が楽しみです!