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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第25話 〚気づかれた異変〛(海翔視点)
最初に気づいたのは、
言葉じゃなかった。
◇
表情。
◇
白雪澪の、
ほんの一瞬の、
呼吸の乱れ。
◇
(……今の)
◇
海翔は、
廊下で立ち止まった澪を見ていた。
◇
倒れるほどじゃない。
震えているわけでもない。
◇
でも。
◇
“いつもの澪”じゃない。
◇
◇
「澪?」
◇
声をかけた時、
澪は少しだけ遅れて振り向いた。
◇
その目が、
一瞬だけ、
遠くを見ていた。
◇
(何かを……見た?)
◇
直感。
◇
理由はない。
◇
でも、
胸の奥がざわついた。
◇
◇
澪は、
「なんでもない」と言った。
◇
その声は、
落ち着いていた。
◇
……落ち着きすぎていた。
◇
(嘘だ)
◇
海翔は、
確信する。
◇
◇
教室に戻る途中。
◇
すれ違う視線。
◇
一瞬。
◇
廊下の端に、
マスクの男子が見えた。
◇
(……西園寺)
◇
視線が、
澪に向いている。
◇
ただ、
見ているだけ。
◇
なのに。
◇
嫌な感じが、
背中を走った。
◇
◇
(守るって……)
◇
今までは、
自然にそうしていた。
◇
隣にいる。
声をかける。
距離を詰める。
◇
それだけで、
十分だと思っていた。
◇
でも。
◇
(足りない)
◇
足りない、と
初めて思った。
◇
◇
昼休み。
◇
澪は、
いつもの席で本を読んでいる。
◇
でも、
ページが進んでいない。
◇
(集中してない)
◇
海翔は、
さりげなく前に立つ。
◇
「今日さ、放課後――」
◇
言いかけて、
澪の胸元に目がいった。
◇
制服の上からでも、
分かる。
◇
呼吸が、
少し早い。
◇
(……やっぱり)
◇
◇
「無理しなくていい」
◇
思っていたより、
強い声が出た。
◇
澪が、
少し驚いたように顔を上げる。
◇
「俺、気づいてないと思った?」
◇
一瞬の沈黙。
◇
澪は、
小さく首を振った。
◇
「……ごめん」
◇
その一言で。
◇
海翔の中で、
何かが決まった。
◇
◇
(これは、
“見てるだけ”じゃダメだ)
◇
澪は、
一人で抱えようとしている。
◇
しかも。
◇
自分が思っているより、
ずっと重い何かを。
◇
◇
放課後。
◇
海翔は、
スマホを取り出し、
玲央にメッセージを送った。
◇
《最近、澪の様子おかしい》
《本気で守る必要ある》
◇
すぐに、
既読。
◇
《俺も感じてた》
《一人にするな》
◇
◇
海翔は、
画面を閉じる。
◇
(……そうだ)
◇
一人じゃない。
◇
守る輪は、
もうできている。
◇
でも。
◇
(俺が、先頭に立つ)
◇
澪の隣にいるのは、
偶然じゃない。
◇
並ぶって、
決めた。
◇
何かが起きる前に。
◇
見えない“未来”が、
形になる前に。
◇
海翔は、
澪を見る。
◇
その横顔は、
静かで。
◇
それでも。
◇
確かに、
何かと戦っていた。
◇
(大丈夫)
◇
心の中で、
そう言った。
◇
(今度は、
俺が先に気づく)
◇
澪が見てしまった未来を。
◇
――選ばせないために。