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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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銀次「う”ぐっっっ!!!」


栞「銀次さん!!!」


(水……水…!水!どこ?!!……… あった!!)


不幸中の幸いか近くにあった井戸水で柱の火を消していく。やがて鎮火し、柱を持ち上げようとしたが止められた。


銀次「止めろ……もういい…助かってもこの足じゃあもう走れないんだ…」


煙を大量に吸ったせいか息苦しく呼吸をする。


銀次「行け……」


栞「嫌です!!絶対に置いて行きませんから!!!一緒に…………一緒に逃げるんです!!!


言ってるうちに涙がじわじわと溢れてきて視界がぼやける。

涙で濡れた顔を裾で拭き取るが止まらない。

柱に掛けた手に力を込めて持ち上げ、下敷きになった銀次さんはその隙に這い出る事が出来た。

銀次さんを支えながら立とうとした時、火消の男がこちらに走って来た。


火消「お前ら早く逃げろ!

って足が!?!……俺がおぶるから何処まで行くか案内しろ」


栞「こっちです!!!」


突然の救世主のお陰で家まで帰り着く事ができた。


火消「じゃ、俺は戻るからな」


それだけ言うと、火消の男は颯爽と火事場へ戻って行った。


栞「ありがとうございました!!」


銀次さんの足は血だらけで火傷のせいで皮膚がただれており、骨折もしているのか腫れているのが分かる。

他にも数箇所擦り傷のようなあとがあった。


(擦り傷なら私が持ってきた鞄の中に絆創膏が入ってたかも!)


急いで鞄を持ってきて中から絆創膏を取り出した。


銀次「それは?」


栞「『絆創膏』って言って傷口を保護するんです。浅い傷程度に使ったりするんです」


銀次「それは凄いな……」


(呼吸はさっきよりも落ち着いたけど足の痛みに苦しんでいるみたい)


出来ることはやったが恐らくこの時代の医療じゃ足を治すことは不可能だろう。


栞「私、水替えてきますね」


血や土の汚れで濁った水を替えようと桶を持って外に出たその時、驚きと恐怖で手が震えて桶を落としてしまった。


栞「嘘………でしょ………」


家のすぐ近くまで火が迫っていたのだ。

この家は火事が起こっている範囲から離れている為『大丈夫だろう』と軽く見てしまっていた。


(まさか吹雪で火がこちらに移ったのか?!)


私は慌てて中に駆け込み銀次さんを支えながら家を出た。


銀次「近くに村があった筈、あの山の先だ」


指差した先は初めて目を覚ましたあの森だった。

だが、少し不安に感じた。


(もし、途中で元の世界に戻ったら私は負傷している銀次さんをあの森に置き去りにしてしまうんじゃないか)


悩んでいる時間は無い、この間にももう家の3分の1は燃やされている。


栞「銀次さんここでちょっと待っていて下さい。すぐ戻りますから」


そう言って家の中から鞄を持ち出した。

私たちは迫る炎から逃げるべく山に入った。

山の奥へと進むにつれ視界が暗くなっていく。

そこで鞄の中から使えそうな物を手探りで探した。


?!……これってもしかして)


取り出したのはキーホルダー型のライトだった。


(毎年冬になると帰り道が暗いからって理由で持たされてたんだっけ。でも良かった、これで周りが見やすくなる)


ライトで周りを見渡すと近くに大きな木が生えているのが見えた。

動物が作ったのか大きな穴が空いていて 穴の中は大きな空洞になっている。


栞「この中に入って吹雪が落ち着くまで待ちましょう」


穴の中は少しだけ暖かく外の音もそんなに聞こえない。


(今何時だろう。年明けたのかな…まるで焼け野原みたいだったな… 焼け野原??…! )


その時、私は思い出した。

あの店主に近々桜町が焼け野原になると言われた予言を。

すっかり忘れていたのだ。

やはり、あの店主は『本物』だったんだ。


銀次「覚えてるかあの未来が視える店主のこと」


栞「はい。今丁度思い出してたんです」


銀次「実は…」


銀次さんは口を噤んだ。


栞「実は??」


銀次「実はあの店主に『足に酷い怪我を負うでしょう』って言われてな、本当にその通りにだった。あの店主は本当だった」


栞「やっぱり実在するんですね未来が視える人って……あ!見てください!吹雪が止んでます。今なら行けますよ」


外に出ると吹雪は止んでいて絶好のチャンス。

私たちは近くの村を目指して足を動かした。

途中で拾った大きな木の枝を杖代わりにして銀次さんは歩いて行く。

私に負担を掛けさせたくないのか極力私の支えは大丈夫と言った。


栞「銀次さんあれ!!」


そう言って空に指をさして見せた。

それは少しだけ明るくなった夜明けの空だった。

まだ日は昇っていない。


(そっか…年明けたんだ)


再び歩き出し村を目指す。

暫く歩いていると先程より少しだけ雪が深く積もっているのが分かる。


栞「ここだけ先程より少し深く積もってますね」


銀次「ここだけ少し谷みたいになってるんだ。でもこの上り道を行けば森から出られる筈だ」


あと少しだと分かり元気が湧いてきた。

上り道は体力の限界だったからよりキツく感じた。

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