テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ひとせるな
318
転校してきた殺し屋君第2章:崩壊する日常
第14話:伝説の引退者と、瞬撃の森田
地下の備蓄倉庫。埃の舞う暗がりに、二人の男が静かに座っていた。 「……ようやく来たか。遅かったな、現役諸君」
声をかけたのは、体育教師の小曽根雪貞だった。その傍らには、いつも学食の隅で黙々と食事をしていた用務員の安藤鳥焼鬼がいる。 「小曽根先生……? それに安藤さんも」 「その名は仮初めだ。俺は佐藤浩介。かつて組織で拳一つで頂点を極めたボクサーだ」 「俺は竹内康作。スナイパーライフルと体術の専門家だ。……教頭のやり方が気に入らなくてな、数年前に引退してこの学校に潜伏していた」
二人は、満身創痍の黒咲たちを見据えた。 「今のままでは教頭には勝てん。凪、藤堂、浪岡。……俺たちが『地獄の補習』をつけてやる。数時間で、お前たちの殻を破らせてやるよ」
そこから始まったのは、死を覚悟するほどの特訓だった。 佐藤(小曽根)の、目にも止まらぬ速さで急所を打ち抜くボクシング技術。 竹内(安藤)の、全方位からの攻撃を予測し、最小の動きで制する超感覚体術。 引退したとはいえ、伝説と呼ばれた二人の技術は圧倒的だった。黒咲はボロボロになりながらも、その技術を貪欲に吸収し、自らの暗殺術を「格闘芸術」へと昇華させていった。
数時間後。地下通路の扉が不自然な音を立てて歪んだ。
「……見つけたぞ。裏切り者の巣窟を」
現れたのは、教頭が新たに放った刺客、森田氏万(もりた うじま)。 彼は全身に暗器を仕込み、独特の不気味な構えで黒咲たちを睨みつけた。 「私はこれまでの刺客とは違う。教頭先生から特別に授かった――」
森田が名乗りを上げようとした、その瞬間だった。 ドシュッ!!
一陣の風が吹いたかと思った。 小曽根――佐藤浩介が、いつの間にか森田の懐に潜り込んでいた。 「喋りすぎだ、三下」
放たれたのは、針の穴を通すような正確無比なワンツー。 森田の顎が跳ね上がり、脳が揺れる。暗器を使う暇さえ与えず、佐藤はさらに深々とボディへと拳を沈めた。 「ガ、ハッ……!?」 森田は白目を剥き、言葉を失ったまま、崩れるように床に沈んだ。まさに瞬殺。伝説の男にとっては、新手の刺客など準備運動にもならなかった。
「……凪、見たか。これが『無駄を削ぎ落とした拳』だ」 佐藤は息一つ乱さず、黒咲に向かって顎をしゃくった。 「準備はできたな。……教頭のいる放送室まで、最短距離で案内してやる」
黒咲の瞳に、これまでにない鋭い光が宿る。 伝説の師二人を背後に従え、黒咲たちはついに、地獄の化した学校の最深部へと進軍を開始した。
(つづく)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!