テラーノベル
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────しゃらり、と聞こえる音。
眠る菊の首元から覗く、銀色の鎖。
静かに彼に近寄って、その鎖をそうっと手繰り寄せる。
そうして出てきたのは、俺の名前が刻まれたプレート。
ドッグタグ。戦死した際、身分証明となるもの。
兵役時に貰ったのを、除隊後に菊にあげたのだ。
いつ戦争になっても、おかしくない俺の国。
いつ敵に殺されても、おかしくないこの身。
だからこれは、将来の形見。
この感じだと毎日肌身離さず、
服の下に付けているのだろう。
将来のことを、よほど覚悟しているのか。
国家による、やむを得ない俺との別れを。
…………なぁ、菊。
今まで俺は、お前を喜ばせたことがあるかな。
否、寧ろ不安にさせてばっかりなんだぜ。
酷く落ち込ませて、悲しませてばっかり。
全部全部、俺の国のことで。
もし俺が韓国に生まれてこなかったら、
お前との関係も、もっと違ったのかな。
お前をもっと幸せに、出来たのかな。
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