私とご主人様の出会いは凍えるような寒い冬の日だった。
いくら鳴いても声は誰にも届かない。
このまま死ぬのかな、私。
こんな路地裏で..。
自分がどこからやってきたのかもわからない。
名前すらもわからない。
するとどこからか酒臭い女の人間がやってきた。
呂律が回ってない人間はなぜか潤んだ目で私を見る。
お前、1人なの?
うちと一緒だねぇ
へへへ〜今はね〜会社の飲み会の帰りだよぉ〜
聞いてもいないのに話し始めた人間。
やっぱり酒臭かった。
どこかで嗅いだことのある匂いだった。
嫌いじゃない
思わず口に出た。
え〜なにい?家来たいのぉ?
いいよいいよ〜汚いけど〜
そんなこと言ってないが、人間は私を抱えて歩き始めた。
人間はボロいアパートの前で止まった。
ここが私の家だよぉ?
年季が入ってていいでしょ〜
人間がバックから鍵をとりだし鍵穴に差し込む。
苦戦しているようだ。
うへえ〜古いから鍵穴詰まってるんだよねえ
あ!開いたあどうぞ入ってえ〜
内装は家の見た目とは裏腹に女の子らしい部屋だった。
白の壁紙にピンクのカーペット、ふりふりのベッド、ミニサイズのかわいいこたつもあった。
こたつの上にはご丁寧にみかんも置いてあった。
あ〜お前のご飯ないわ!
コンビニ行ってくるからちゃんとお留守番しててね!
人間はバタバタとスーツから私服に着替えて出ていってしまった。
鍵がかかっていなかった。
全く不用心な人間だな。
暇だから部屋でも探索するかな〜
試しにこたつに入ってみる。
わ!!!
すごく暖かくて驚いた。
気持ちがいい。
生きてきた中で1番幸せかもしれない。
そんなことを考えてると瞼が閉じ始めていた。
気づいたら朝になっていた。
どうやらこたつの中で寝ていたらしい。
どこからかいい匂いがする。
またどこかで嗅いだことがある匂い。
あ〜!起きた!おはよ。
よく寝れた?
だれ?
思わずそう呟いてしまった。
昨日の酒臭い人間とは別人のような綺麗な女がそこにいた。
コメント
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結構面白いので続きを作って欲しいです!