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「お待たせしましたぁ!「お待たせしましたぁ!」
ガチャガチャとグラスが触れ合う音とともに、アルバイト店員の威勢のいい声が店内に響いた。
「生ぁ! ハイボール! 酎ハイ!」
幹事の男が、トレイいっぱいに並べられたグラスを次々とさばいていく。
その様子を、俺は煙草の煙越しにぼんやり眺めていた。
「ねぇねぇ、何にした?」
向かいに座っていた同僚の女が、テーブル越しに身を乗り出してくる。
「……っ」
俺は一瞬、言葉に詰まった。
別に、何を飲もうが俺の勝手だ。
アルコールが苦手なのは体質だし、無理に飲んだところでどうにかなるものでもない。
――それなのに。
周りが酒を煽っている中で、自分だけジュースを飲んでいるところを見られるのが、どうしても嫌だった。
ガキだと思われたくない。
ただでさえ、年下なのだから。
「……」
答える代わりに、俺は大きく煙草を吸い込んだ。
「次ぃ、コーラ! コーラ頼んだ人誰?」
「……俺です」
手を挙げようとした、その瞬間。
ドンッ。
まるで俺の言葉を遮るように、目の前へビールジョッキが置かれた。
「はいはい! コーラ私!」
隣から、やけに明るい声が降ってくる。
……まただ。
この人は、すぐ俺を甘やかす。
ーーー
「カンパーイ!!」
先輩は、幹事の合図に合わせて俺のコーラを高々と掲げた。
「先輩……」
思わず名前を呼びかけたものの、先輩はにこにこと笑っている。
仕方なく、俺も目の前に置かれたビールジョッキを持ち上げた。
「カンパーイ!」
周囲とグラスを合わせ甲高い音が弾ける。
その向こう側で、先輩が楽しそうに笑っていた。
……なんだよ。
そんな顔されたら、怒るに怒れないじゃないか。
「先輩、俺のこと甘やかしすぎですよ」
「え?」
「もうガキ扱いするの、やめてください。別に…アルコール飲めないこと、隠してないですし…」
「アハハ! ごめんごめん」
悪びれる様子もなく半分ほど飲み干したコーラのグラスを俺へ差し出してくる。
その無防備な笑顔が、妙に腹立たしかった。
俺は眉を寄せながら、先輩からコーラを受け取りビールジョッキを先輩に渡す。
先輩がジョッキを受け取ろうと顔を近づけた瞬間。
「ふーーーっ」
わざと、煙草の煙を先輩の顔へ吹きかける。
「ちょっと! もう!」
先輩が慌てて手をパタパタと振りながら、眉間に皺を寄せた。
「アハハ!」
俺は思わず笑う。
「嫌なら禁煙席に移動すればいいじゃないですか」
「はぁ?!」
先輩が俺を睨みつける。
「あんたがここにいるのに、移動するわけないでしょ!」
「…………」
ぴたりと俺の動きが止まった。
先輩は、当たり前みたいな顔で、手元のビールを一口飲んでいる。
……なに、それ。
ずるくね?
そんなこと、平然と言うなよ。
俺は黙って飲みかけのコーラを一気に飲み干した。
コメント
1件
第19話、読み終わりました。飲み会の場でコーラをビールジョッキで持ってくる先輩、ずるいですよね。主人公が「ガキ扱い」って言いながら、煙草の煙を吹きかけて仕返しするところとか、先輩の「移動するわけないでしょ」って返しにグッときました。コーラを一気に飲み干すラスト、二人の距離感が絶妙で、続きが気になります。