オスマン:めう? この桜、今年も綺麗に咲いためうね。
オスマンは城の敷地内にある、満開の桜並木を見上げ、薄いピンク色の花びらが舞う様子に目を細めた。隣には、少し離れた場所に咲く菜の花畑に視線を送りながら、ひとらんらんが立っている。
ひとらんらん:うん、見事だね。…って、オスマん。花より団子って感じの表情してるよ、君。
オスマン:紳士の嗜みめうよ、ひとらんらん。美しいものを見たら、次は美味しいものをいただくのが礼儀めう。グルッペンに内緒でお茶請けを拝借してきためう。ほら、ひとらんらんの分もあるめう。
オスマンは懐から取り出した羊羹と、別のポケットから出した茶葉が入った袋を差し出した。
ひとらんらん:えっ、いいの? ありがとう。でも、またグルッペンに怒られるんじゃないの? 「お菓子が盗まれた!犯人はオスマンに違いない!」って騒ぐぞ。
オスマン:大丈夫めう。あの総統は、美しい景色とお茶請けがあれば上機嫌になるめう。それに、この時期は皆、春の陽気でちょっとゆるくなってるめう。
ひとらんらん:そういうのは「油断」って言うんだよ。まぁ、僕も少し甘いものが食べたかったから、ありがたくいただくけど。お茶は僕が淹れるよ。
ひとらんらんは、慣れた手つきで桜の木の下にあるベンチに座り、持参していた魔法瓶の湯とオスマンからもらった茶葉で紅茶を淹れ始めた。ひとらんらんは、普段は穏やかだが、畑や動物を大切にする心優しい一面と、それを脅かす者には容赦ない復讐心を見せる「外道」の一面を持つ。この平和な時間は、彼の心にも安らぎを与えているようだった。
オスマン:ひとらんらんが淹れてくれる紅茶は格別めう。
ひとらんらん:そうかい。君は本当に変態紳士だね。
オスマン:めう? 変態は余計めう! 僕はただ、美を愛する紳士めう。
ひとらんらん:はいはい。でも、オスマンが時々見せる、そういうちょっとズレたところ、僕は嫌いじゃないよ。見ていて飽きない。
ひとらんらんは微笑みながら、湯気の立つ紅茶をオスマンに差し出した。
オスマン:めうっ! それはもしかして…愛の告白めうか? 僕は紳士だから、受け入れざるを得ないめう!
ひとらんらん:違う違う! 相変わらずぶっ飛んでるな、君は。ただの茶菓子のお礼だよ。はい、どうぞ。
オスマンは笑いながら紅茶を受け取り、羊羹を一口頬張った。
オスマン:ふむ…春の羊羹も美味めうね。
ひとらんらん:あぁ。この穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
オスマン:めう? ひとらんらんが、そんなゆるふわ農家みたいなことを言うなんて珍しいめうね。
ひとらんらん:時々ね。平和が一番だよ。また誰かさんのせいで、畑が燃やされたり、大切なものが壊されたりしたら、僕だって外道になるんだから。
そう言って、ひとらんらんは、穏やかながらも少し冷たい目で、遠くの城をちらりと見た。その鋭い視線に、オスマンは一瞬身震いする。
オスマン:め、めうぅ…。ひとらんらんの外道モードは怖いめう…。だからこそ、僕がこの平和な春の日を外交で守ってみせるめう。
ひとらんらん:外交ね。…うん、頑張ってよ。その間に、僕はみんなから隠れて、庭の隅っこでニワトリに餌をやってくるから。
ふたりは羊羹と紅茶を手に、満開の桜と菜の花畑を眺めた。春の陽気と甘い香りが、変態紳士と外道ちゃんという異色の組み合わせを、そっと優しく包み込んでいた。
(完)
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