テラーノベル
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FJORDまであと一週間程という頃、生放送の音楽番組への出演があった。ただ、BS放送とはいえ、裏番組での特番放送も被っていた僕達は、ライブリハーサルを理由に、特番終わりに途中から生放送現場へと入る事になった。
いそいそと出演者席に座り、元貴と交流のある人達とのトークが繰り広げられる。すると、SnowManさんにもトークが振られた。
「SnowManも、Mrs. GREEN APPLEと交流があるの?」
すると、目黒さんが話し始めた。
「はい、あ、僕ー、ちょっと勝手になんですけど。あのー、歌番組で以前ご一緒した時に、僕去年ちょっと体調崩してた時期がありまして、で多分ネットニュースかなんかで見てくださったのか、あのー、本番前の待合室みたいな所で、…藤澤さんが、僕に、『体調大丈夫ですか、体気をつけてください』って、わざわざ言いに来てくださって。それが初めての…あの会話だったんですけど、すごく嬉しくて、優しい方なんだなぁという、はい、感謝してます。」
目黒さんが、すごく丁寧に、僕の事を話してくださった。僕はびっくりして、目黒さんを見る。
「嬉しぃ…。いや、ホントに急に話しかけちゃって、しかも、ね、合間だっので、一瞬のやり取りだったんですけど。それを覚えてくださってるのがもうホントに嬉しいです。」
「いや、こちらこそありがとうございました。」
「ありがとうございます。」
お互いにペコペコと頭を下げて、周りの方からも「優しい。」と拍手をもらってしまった。恥ずかしいけど、目黒さんにとって、あの言葉が負担になっていなかったらしい事に、一番ホッとした。
生放送が終わり、SnowManの亮平くんと目黒さんが、一緒に僕の元へ話しかけに来てくれた。
「涼架くん、おつかれ。ね、めめ喜んでたでしょ。」
「いや、ホントにいきなりだったから、迷惑だったかな〜って気になってて。今日ああして話してくださったから、あー良かった〜ってすごくホッとしました。」
「迷惑なんてそんな、俺ホントにすごく嬉しくて。ありがとうございました。」
「めめも、涼架くんと連絡先交換したら?今度3人でご飯行こうよ。」
「…良いですか?」
「え!こちらこそ、良いんですか?」
「ご迷惑でなければ。」
「当たり前じゃないですか!わー、嬉しい。」
「あ、じゃあ、僕からめめに涼架くんの連絡先送ってても良い?」
「あ、お願いしても良い?ありがとう。」
「じゃあ、お忙しい時にすみませんでした。ライブ、頑張ってください。」
「またね。」
「ありがとうございます、また〜。」
僕は、フワフワとした気持ちで手を振って、二人と別れた。
楽屋に戻ると、元貴がソファーに座って、スマホを触っていた。
「おつかれー、元貴。」
僕も、長机に並べられた椅子の一つに座って、声をかける。
「んー。」
元貴は、スマホを見たまま、返事をした。
「…良い話持ってんじゃん、涼ちゃん。」
元貴が、顔を上げて微笑みかけた。
「目黒さんの事?ね、びっくりだよね、覚えててくれるなんて。」
「うん、嬉しいよね、ああいうの。」
「さっき亮平くんと一緒に来てくれて、連絡先交換しよって。今度、ご飯も一緒に行こーって。」
「良かったじゃん、友達増えて。」
「ホントだね、貴重なお友達だよ。」
はは、と二人で笑って、みんなで着替えに入った。
後でスマホを見ると、亮平くんから、目黒さんに連絡先を送った旨の連絡と、目黒さんから「よろしくお願いします。」と新しくトークが送られてきていた。
それから数日後、僕のだいぶ色落ちした青髪が、ライブに向けてピンク髪へと染められた。美容室の鏡で写真を撮って、元貴へ送る。
『こんな感じ。どう?』
すぐに既読がついて、はや、と呟く。毎度のことながら、元貴は連絡が速い。
『いーじゃん、明日しべちゃ?』
『うん』
『気を付けてね』
『ありがとう』
『いろいろね』
『いろいろって?』
『いろいろだけど 第一に健康だけは』
『はーい』
『けがとか 病気とか』
『はいはい』
『はいは一回』
『はい』
お母さんみたいだな、とクスクス笑いながら、トークのやり取りを終えた。
そう、僕はライブの前にも関わらず、特番で知り合った北海道の子ども達に、また会いに行くサプライズ収録に一人で行くのだ。
こちらに話が来た時は、忙しい時期に被るからどうしようか、とスタッフさん達は悩んでいたが、「僕が行きます、行きたいです!」と言うと、番組側の方も「藤澤さんが良いです!」とすごく喜んでくれたらしい。とてもありがたい話だと思う。
その夜、元貴から着信があった。
「もしもし。」
『もう家?』
「うん、そうだよ。」
『明日の準備は?』
「出来てるよ。」
『忘れもんない?』
「大丈夫だって、ホント、お母さんだね元貴は。」
『…お前がだらし無いだけだろ。』
「まぁ確かに。」
『…はー。』
「どうしたの?お疲れ?」
『…んーん。』
「なに?」
『…時間が足りない。』
「時間?」
『………涼ちゃんが足りない。』
どきん、と心臓が高鳴る。二人きりの時に時々出る、甘えた元貴の声。
「…そうだね、全然二人で会えてないね。」
『んー…。』
「僕も、足りないなー、元貴が。」
『…ふふ。』
「ん?」
『ううん。』
「なに。」
『なんでもない。』
「なにさー。」
『…久しぶりに言って。』
「何を?」
『俺のことどう思ってる?』
「んぇ…。」
一人、自分の部屋で顔が熱くなる。
「な、んで、急に?」
『いーじゃん。』
「いい…けど。」
『…早く。』
「…元貴も言ってよ。」
『…うん。』
「言ってよ?!」
『わかったって!早く。』
「えーと…。僕は、元貴が、大好き…です。」
『…もーちょっと。』
「ええー?」
『えーってなんだよ。』
「ごめんごめん。あー…、元貴、…愛してるよ…。」
『んー…。』
「もーいーでしょ!恥ずかしいよ!おしまい!」
『…すき。』
ブチッと通話を切られた。元貴の蚊の鳴くような声で聴こえた「すき」を、僕は頭の中で何度も反芻して、愛おしく想う気持ちで心を満たした。
北海道で可愛い子ども達と再会を懐かしみながら、しっかりと交流を楽しみ、一泊ですぐに東京へと戻った。
翌日には、ラジオの収録があり、僕達はブースへ集まった。
「…涼ちゃん、なんか焼けてない?」
「ちゃんと日焼け止め塗ったんだけどな。楽しすぎてずっと外で遊んでたから焼けちゃったのかな?」
「野外ライブ前に焼けるか?フツー。」
元貴と若井に突っ込まれて、ラジオでもネタにされてしまった。
僕達はそれぞれにありがたい事に忙しくさせてもらっているが、元貴は特に、朝ドラの撮影が毎日のように入っていて、電話も碌に出来ない日々が続いていた。
そんなバタバタの中で、僕達はとうとう、十周年ライブの当日を迎えるのだった。
コメント
19件
時系列を絡めたお話が本当にお上手です👏✨ 青髪赤服の彼と薄ピンクの髪の彼ですよね…承知しました😌 早々に🖤との絡みが見れて嬉しいです✨これこの後ヤキモチ案件じゃないの〜?てニマニマしてます笑 カップルトークもホントごちそうさまですって感じです🤭 あと❤️さんの「おまえ」が好きです💕これからもお願いします? 電話の「すき」はもう想像できすぎて、私の脳内音声機能もバッチリ働いてくれました笑
更新ありがとうございます! 標茶の子ども達とのお話はやっぱりみんな大好きですよね❤️ 放送が楽しみです。 普段の何気ないやり取りの中のラブラブ、ほんと大好きです。 あと、電話でのやり取りは、もう聞いてる方がドキドキしちゃうやつですね🫠2人とも、『好き』を言うだけで電話切っちゃうあたり、すごく可愛いです😍…電話って、相手の声が近くて、すごくドキしませんか?😅 また次のお話も楽しみにしています。
十連歌⛄️🖤さんとの絡みを入れて下さってたのは、ここに繋がるなんて🤭💕 私も某歌番組で見て、キャーキャーなってたので、めちゃ嬉しいです🙌✨ しべちゃの💛ちゃんも大好きで🤤ビジュと、ハンバーガ屋さんで♥️くんが大丈夫?入る?のくだりが、、、 興奮しすぎてすみません🤣