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秋雨side
正直、驚きと動揺を隠せなかった
だって、今までずっと待っていた担任が帰ってきたのだ
しかも今の状況で伝えられるんだから、誰だって驚くわ
だけど、なんだか気が抜けた
もしかしたら俺は、今までずっと気を張っていたのかもしれない
ずっと、あの時から
みんなを元気づけようと
ちゃんとしなきゃとか
だけど、あともうひと踏ん張り
今、晴明が何とかしてくれる
だから、もう少しだけ
もう少しだけ頑張れ、俺
「ん……?」
目を覚ました時には、白い天井が見えた
「あれ……」
「あ、起きたか」
「え、起きた!?」
どうやら、あの後から気を失っていたらしい
「うわぁぁぁぁん!!!!」
「え!?」
安倍…いや
晴明は俺に飛び込んできたかと思えば、俺の胸元で泣き始めた
「よ”か”っ”た”よ”ー」
「こら!けが人に突進しない!」
「た”っ”て”ぇ”ー」
「おい顔とんでもないことになってるぞ……」
なんか既視感すごいな……
そんなこと思いながらも、俺は林間合宿の続きであったことを思い出した
「そういえば、林間合宿は……」
「あ、それなら秦中と神酒が何とかしてくれたよ」
「良かったー…… 」
……つーか、後で叱られないかな?
うわ、嫌なんだけど
「いや自分の体調気にしろよ、そういう所も晴明に似たな」
「え、俺そんなに晴明に似た?」
「僕よりちゃんとしてるように見えるけど……?」
「そういうことじゃねぇよ!」
鈍感だな!と言われた
いや俺鈍感じゃないぞ!
と反抗しようとした時
「まぁその前に……」
佐野が晴明に近づいたかと思った瞬間
「なんでお前は俺らにあのこと言わなかったんだ?」
と首を掴んだ
「いっでででで!?」
「いやさすがに晴明でも死ぬぞ」
「ここまでしないとこいつわかんないじゃん」
「そうだけど……」
「納得しな、ちょ、本当に痛い!」
佐野も満足したのかそこでおろした
だが下ろし方が乱暴だったため、晴明はよろけて尻もちをついた
「で、なんで話さなかったんだ?」
「いやー、なんと言いますかー」
佐野は今までのこともあり、痺れを切らして晴明に股ドンした
「いいから話せ」
「話す話す!だからそんな怖い顔しないで!!!」
と、佐野はその場からどいた
そんなにムカついてたのか……
「えっと……」
「本当は来た時に話そうかなー、とか呑気に考えてたんだけど……」
と、そこで言葉を詰まらせた
「だけどなんだよ」
「そーだそーだ」
「えっとぉ……」
また佐野が痺れを切らしかけ、晴明に詰め寄る
「いや本当に怖いからやめて!」
「お前がちゃんと話さないからだろうが」
「少し僕にも時間ちょうだいよ!」
「問答無用」
「酷すぎる!」
俺はその会話を見てて、クスッと笑ってしまった
「何がおかしいのさ!」
「ごめんごめんw」
なんだか……
「なんだか懐かしくってさ」
「……!」
「ほら、だって晴明ってよく佐野の餌食になってたじゃん」
「餌食って、言い方……」
「まぁ餌食にしてたな」
「え、本当にそう思ってたの?」
「あぁ」
「酷いよ!」
と言ってると、晴明と佐野も笑い始めた
「確かにこんな会話してたねw」
「そうだなw」
「だから言ったろー」
「それで僕がよく〆られたりしてたね……」
「あぁそうだな」
「いきなりスンとするなよ、そっちの方がよっぽど怖いぞ」
と、その後はずっと世間話をしてきた
あの頃に戻ったみたいに……
「はぁー、喋ったねー」
気づいたら、日はもう沈み始め、日の頭しか見えないぐらい沈んでいた
「つーか、結局お前がずっと隠してた理由聞いてねぇ」
「いや本当にくだらないからいいよ」
「どのくらいぞ?」
「分からないけど」
「なら話せや」
「ま、また今度! 」
「秋雨くんが退院したらまた時間作って話そ!」
佐野は少し不満そうだったが、渋々承諾した
「お前逃げんなよ?」
「逃げないから!」
多分、と最後にすごく不安な言葉を残した
本当に逃げる可能性あるぞ……
「じゃあ、俺の退院祝い兼晴明お帰り会だな!」
「そうだな」
「お店とかは僕と佐野くんで決めとくね」
「期待しとくぞ!」
「え、じゃあいい店見つけないとね!」
「高いところはやめろよ?」
教師給料少ないんだから、と現実を突きつけてきた
その時、晴明は少し目を逸らした
あ、これ高いところ行こうとしてたな
「じゃあ、そろそろ帰るな」
「秋雨くん、お大事に」
「おう、ちゃんと安静にするぞ!」
その会話を最後に、晴明と佐野は病室を後にした
さっきまでの騒がしさとは一変、俺しかいない病室は静まり返った
だけど、俺の中のどこかがまだ興奮していた
まるで、夢みたいだったからだ
もし夢だったら、まだ覚めたくない
どうか、このままで
幸せなままでいれますように