──近くのカフェに入り、コーヒーとココアを頼んだ。
温かな湯気が立つココアが運ばれてくると、少年は両手でカップを抱えて一口を飲んで、
「僕は、天馬って言います。これは、うちで飼ってる猫のテン。お姉さんの名前を教えてもらってもいい?」
そう矢継ぎ早に聞いてきた。
「私は、理沙…。その猫、テンちゃんって言うんだ…」
コーヒーにお砂糖を入れ、軽くかき混ぜながら、キャリーの中でおとなしくしている猫を眺めた。
「うん、白テンっているでしょ? あれに似てるから…だから、テン。あとは僕の名前にも、ちなんでるけど」
猫は、真っ白な毛並みに赤い首輪がよく似合っていて、とても可愛らしかった。
「そっか、テンに似てるからなんだね」
「うん。ねぇ、理沙?」
急に名前を呼ばれて、びくりとする。
「えっ、何…?」
「これから、僕のうちに来ない?」
「天馬くんの家へ? でも、いきなり行ったりしたら悪いし……」
やんわりと断ろうとするも、
「大丈夫だよ。両親は仕事で留守だし、だからちょっと来てよ…ね?」
ふっと小首を傾げて見つめられた。
上目づかいに甘えるような丸い瞳が、まるで猫みたいにも思えて、私はその無邪気な表情にためらいもなく気を許して、彼の家へ行くことをOKした──。
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