テラーノベル
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二人で文化祭を楽しむ。けれど、なんだか愛斗先輩の機嫌が悪い気がする。俺は廊下を歩きながら考える。
もしかして俺、なんかしちゃったかな。
「愛斗先輩」
「なに?」
「俺、なんかしちゃいましたかね?」
「え?なんで?」
愛斗先輩は不思議そうにそう言う。
「なんか愛斗先輩、いつもと違うなって」
俺がそう言うと、愛斗先輩は少し黙ってから口を開く。
「…気のせいじゃない?」
「そうですか?」
「うん」
愛斗先輩はそう言ってニコッと笑う。
そんな先輩を見て、俺は安心して廊下を歩き続けた。
周りからは相変わらず、俺を褒める声が聞こえてくる。なんだか凄く気分がいい。思わず、ふふっと笑ってしまうくらいに。
そんな時、どこからか男子生徒の声が聞こえてくる。
「あっ、あの子翔くんだよね。男だけど正直結構タイプだわ〜」
それを聞いて俺は愛斗先輩の方を見る。
「今の聞きました?俺の事タイプって…」
そう言いかけた瞬間、俺の腕を愛斗先輩が掴む。そしてそのまま足早に歩き出した。
「ちょっ、愛斗先輩?」
愛斗先輩の目が鋭く変わる。あの日、ナンパから助けてくれた時と同じ目だ。
やっぱりおかしい。いつもの先輩じゃない。
「愛斗先輩っ」
そう呼びかけるけど、愛斗先輩は無視して足早に歩き続ける。
だんだん、人通りが少なくなっていく。
「先輩。そっち、何もないですよ」
そう言うけれど、先輩は怒った目をしたまま、歩き続ける。そしてそのまま、人気のない廊下に出た。
「ねぇ先輩。俺がなんかしたなら謝りますから」
「…別に翔くんは何もしてないよ」
やっと答えてくれた。でも、目は怒ったままだ。
「じゃあなんでそんな目してるんですか。俺がナンパされた時もそんな目してましたよね」
俺がそう言うと、愛斗先輩は立ち止まる。けれど、また黙り込んでしまった。
「先輩…?」
「…ごめん。ちょっとムカついただけ」
「ムカついたって何に?」
「翔くんが取られそうだったから…」
先輩は小さい声でそう言った。
俺の胸がドクドクと音を立てる。
「今、なんて…?」
俺がそう言うと、愛斗先輩は俺の手を離す。
「…なんでもない。別に変な意味じゃないから気にしないで」
そんなこと言われても、気にしないなんて無理だ。
だって、俺の心臓が鳴り止まないから。
もしかしたらこれは、よくドラマとかアニメで見る、恋ってやつなのかもしれない。
「…無理ですよ。気になります」
「だったら…」
愛斗先輩はそう言って、俺のウィッグに触れる。
「これ、外してよ」
「…なんでですか?」
「それ被ってると、みんな可愛いって言うでしょ?」
「それはまぁ、そうですね」
「そのせいで、落ち着いて文化祭楽しめないからさ」
「あぁ…そうですか。それはすみません」
俺はそう言った後、ウィッグを外す。
そして、外してから俺は焦る。髪、絶対ボサボサじゃん。
最悪だ。愛斗先輩にこんな姿見られるなんて
「あっ…あの、ちょっと待ってくださいね」
俺は慌てて髪の毛を直そうと色々いじってみる。
でも、鏡も無いし今どうなってるか分からない。
1回、トイレで直してこようかな。
「あの、ちょっとトイレで直して…」
俺がそう言いかけると、愛斗先輩の手が俺の髪に触れる。
「じっとしててね」
そう言って愛斗先輩は俺の髪をいじる。
なんだか、凄く距離が近い。胸がドキドキする。
しばらくして、俺の髪から愛斗先輩の手が離れる。
「はい。出来た」
「すみません。ありがとうございます」
「やっぱり、俺はこっちの方が好きだな」
「え?」
「これでもう、他の人には可愛いって言われないでしょ?」
「まぁ、多分そうですね」
「翔くんの可愛いは俺だけの物だもんね」
愛斗先輩はそう言って俺の髪をそっと撫でる。
愛斗先輩の様子がおかしい。
でも、さっきみたいに怒った目じゃない。いつもの優しい目でもない。
胸がドキドキするほどの、優しい目だ。
「愛斗先輩…?」
俺がそう言うと、俺の髪から愛斗先輩の手が離れる。
「…戻ろっか」
先輩はそう言ってニコッと笑った後、元来た廊下を引き返す。俺はそんな先輩に胸をドキドキさせたまま、ついて行った。
その後先輩はいつもの先輩に戻った。優しい目で笑いかけてくれるいつもの先輩。でも、なんだか今日は少し距離が近くてドキドキした。
文化祭で恋を自覚してから愛斗先輩の事がもっと好きになった。そして、先輩の卒業が近づいていることにも気がついた。俺は先輩とずっと一緒にいたい。ただの友達じゃなくて、恋人として一緒にいたいと。そう思ってしまった。
だから、俺は卒業式までに先輩を振り向かせる。
俺のこと可愛いって言ってくれるし、ちょっとは俺のこと好きだよね。なんて、冗談言ってる場合じゃない。
卒業式まで後3ヶ月ちょっとしかない。頑張るぞ。俺。
そう意気込んで数日後。俺は愛斗先輩と遊園地に来ていた。そして、入口近くにあったカチューシャの店に入る。
「愛斗先輩!こっち来てください!」
「なに?」
「ほらこれ、犬のカチューシャです。俺に似合うと思いません?」
俺はそう言ってカチューシャを付け、愛斗先輩の方を見る。
「そうだね。凄い似合うよ。可愛いし」
「やっぱり可愛いですよね〜。わんっ!」
俺はそう言って手で犬のポーズをする。
これでどうだ。俺の必殺ワンワン攻撃。これで先輩はイチコロだよね。
そんなことを思っていると、愛斗先輩は俺の顔を覗き込む。
「ほんと、可愛いね」
そう言いながら愛斗先輩は俺の頭を撫でる。
やばい。かっこいい。どうしよう。俺の必殺技なのに、俺がやられた。これはまずい。態勢を立て直そう。
「…愛斗先輩は…これ!」
俺はそう言いながら黒い猫耳のカチューシャを愛斗先輩に差し出す。
愛斗先輩は不思議そうに受け取る。
「猫?」
「はい!ほら、つけてみてください」
「俺似合うかな…」
先輩はそう言いながら猫耳のカチューシャを付ける。
かっこいい。なんか、 高級な猫って感じ。
「どう?」
「めっちゃ似合います!かっこいいです!」
「かっこいい?」
「はい!高級な猫ちゃんです!」
「高級なネコちゃん…」
「1回にゃんって言ってみてくださいよ」
「えっ?」
愛斗先輩はそう言った後黙り込む。
「お願いします!1回だけですから、ね?」
俺はそう言って目をキラキラさせてみる。おねだり大作戦。先輩のにゃんは絶対に聞いておきたい。
「…分かったよ」
先輩はそう言った後、手をグーにして頬の下で前に倒しながら言う。
「にゃ〜?」
一瞬、時間が止まった気がした。可愛すぎる。さっきまでかっこよかったのに、急に可愛い。俺のライフはもうゼロだ。
「…愛斗先輩。可愛すぎです。俺より可愛いです絶対」
「それはないでしょ。翔くんが1番可愛いよ?」
そう言って先輩はニコッと笑う。もう本当にこの人は。
「沼だ…」
コメント
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今回の作品もめっちゃドキドキとワクワクが詰まってて顔がニヤけてましたw やっぱりこの昨日大好きです!!これからも頑張ってください!!!!