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『お前、また寝てへんの?』
朝の光が射し込むキッチン。
健が冷蔵庫のドアを閉めながら、ソファに丸まってる晶哉を見下ろした。
「……うるさいな、健こそ、なんでそんな早起きなん……?」
晶哉は毛布にくるまったまま、目元だけ出して健をにらむ。
けど、睨んでるつもりのその目は、眠たげで全然怖くない。
『昨日もゲームしてたんやろ、お前。いつ寝てんねん、ほんま……』
「ゲームちゃうわ。健が寝てる顔、見てた。」
『は?なんやそれ、怖。』
「怖ないわ。癒されんねん。」
健は一瞬言葉を詰まらせたあと、気まずそうに咳払いした。
『……そんなん言われたら、寝られへんやん。』
「寝てたくせに。」
『うっさいわ。』
小さなため息と一緒に、健は晶哉の前にマグカップを置く。
ホットミルク。
晶哉の好きなやつ。
「……ありがと。」
『ちゃんと飲んで、ちょっとは寝ろや。』
「健が一緒におってくれたら、寝れる。」
晶哉の声は冗談っぽかったけど、目は本気やった。
健はその視線から逃げるように視線をそらす。
『……あんまり、そんなこと言うなや。』
「なんで?」
『本気にしてまうからや。』
晶哉が少し驚いたように目を開いた。
そして、ぽつりと呟く。
「……もう、してくれてんのかと思ってた。」
『……。』
沈黙が降りる。けど、嫌な空気ではなかった。
健はゆっくりと、晶哉の隣に腰を下ろす。
無言のまま、毛布の中に手を差し入れて、晶哉の手を探した。
『……お前、ずるいわ。そんなん言うて、俺のこと振り回して。』
「ちゃうわ。健のこと、ほんまに……」
言いかけた言葉を、晶哉は飲み込んだ。
けど、健はその続きをわかってた。
『……好きって、言えや。』
「……す、すき。」
『俺もや。』
ぎこちない関西弁の告白が、朝の光に溶けていった。
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