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了解だよ🌸「初めて“パパ”って言われた時」
黒尾鉄朗編/長編でいくね。
わちゃっと日常、最後はじんわり胸にくる感じで書くね。
⸻
初めて“パパ”って言われた時
黒尾鉄朗編
リビングの床に、カラフルな積み木が散らばっている。
その真ん中で、🌷はお尻をぺたんとつけて、積み木を一つずつ叩いては笑っていた。
「それ太鼓じゃねーからなー?」
黒尾鉄朗はソファにだらっと座りながら、スマホを構えている。
動画モード。
理由は簡単だ。今のこの瞬間が、可愛すぎるから。
「🌷〜、こっち向いて笑ってみ?はい、にこー」
「きゃっ」
意味は分かっていないはずなのに、🌷は声のトーンだけで察したように笑う。
それだけで黒尾は満足そうに口角を上げた。
「……はぁ、反則だろ。可愛すぎ」
キッチンからその様子を見ていた🌸が、くすっと笑う。
「またデータ増やしてるの?」
「増やすっつーか、記録?将来見返す用?」
「それ全部、もう何十本目だと思ってるの」
「いいんだよ。🌷の成長は全部保存案件」
親バカ、という言葉がこれ以上なく似合う男だった。
⸻
🌷は最近、少しずつ言葉らしきものを発するようになっていた。
「まんま」
「ばー」
「んー!」
どれも曖昧で、意味があるようなないような音。
🌸はそれでも一つ一つを大事そうに受け止めていた。
「今の“まんま”、多分お腹すいたって意味だよね」
「天才か?」
「親がそう思い込んで育てるの」
黒尾は笑いながらも、内心ではちょっとだけ期待していた。
——いつか、呼ばれるんだろうな。
“パパ”って。
だけど同時に、こうも思っていた。
——まぁ、まだ先だろ。
——急がなくていい。
そう思っていた、その日の午後までは。
⸻
🌸が洗濯物を取り込みにベランダへ出て、
リビングには黒尾と🌷の二人きり。
黒尾は床に寝転がって、🌷と同じ目線になる。
「よし、じゃあパパと遊ぼーぜ」
🌷はじっと黒尾の顔を見つめる。
まばたきもせず、真剣な表情で。
「……?」
「なにその顔。パパそんな変か?」
黒尾が眉をひょいと動かすと、🌷はきゃっと声を上げて笑った。
その反応に気をよくして、黒尾は調子に乗る。
「ほらほら、これはなー、こうやってー」
積み木を頭の上に乗せて、わざと落とす。
「いてっ」
わざとらしいリアクション。
🌷はそれが面白かったのか、声を立てて笑い、黒尾の方へハイハイしてくる。
「おー、来た来た」
腕を伸ばすと、🌷は黒尾の胸にぽすっと倒れ込んだ。
小さな手が、黒尾のシャツをぎゅっと掴む。
その瞬間——
「……ぱ」
黒尾は、一瞬動きを止めた。
「……?」
聞き間違いかと思った。
だって、あまりにも突然で。
🌷はもう一度、黒尾の顔を見上げて、口を開く。
「……ぱ、ぱ」
黒尾の心臓が、どくんと音を立てた。
「……え、今……」
🌷はにこっと笑って、
はっきりと、こう言った。
「ぱぱ」
——世界が、一瞬で静かになった気がした。
⸻
「……」
黒尾は、声が出なかった。
ただ、目を見開いたまま固まっている。
🌷はそんなこと気にも留めず、黒尾の頬をぺちぺち叩く。
「ぱぱ」
「ぱぱ!」
何度も、楽しそうに。
その瞬間、胸の奥がぎゅっと掴まれたように熱くなった。
「……ちょ、待て」
黒尾は片手で顔を覆った。
「……無理、今の反則……」
声が、少し震える。
「ちょ、🌷……もう一回言ってみ?」
🌷はきょとんとしながらも、また笑って、
「ぱぱ」
——ダメだ。
黒尾は🌷をそっと抱き寄せて、強く、でも壊れないように抱きしめた。
「……やば……」
背中をぽんぽんしながら、深呼吸。
「……パパって……呼ばれた……」
そこへ、ベランダから🌸が戻ってくる。
「どうしたの?急に静か——」
次の瞬間、黒尾の様子を見て言葉を失った。
目が赤い。
声もおかしい。
「……てつくん?」
黒尾は顔を上げて、真っ直ぐ🌸を見る。
「🌸……」
「な、なに?」
「今……🌷が……」
🌷はタイミングよく、🌸の方を向いて、
「ぱぱ!」
🌸は一瞬固まり、次の瞬間、口元を押さえた。
「……え……」
黒尾は、照れも隠さず、少し誇らしげに言う。
「……初めて」
「俺のこと……パパって……」
🌸の目に、うっすら涙が浮かぶ。
「……よかったね、てつくん」
「……っ、あぁ……」
黒尾は🌷の頭にそっと頬を寄せた。
「……なぁ、🌷。 パパな……」
少し照れくさそうに、でも真剣に。
「……一生、守るから」
🌷は意味なんて分からないまま、
黒尾の胸に顔をうずめて、満足そうに笑っていた。
その小さな声が、
黒尾にとって一生忘れられない宝物になったのは、言うまでもなかった。