コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第13話「異邦の訪問者」
🚀 シーン1:静かなる接触
ゼインは瓦礫の上で息を整えた。
ヴェール・バインドとの戦闘の余韻が、まだ肌に焼き付いている。
黒いジャケットの裾を翻しながら、彼は腕の刻印を見つめる。
(……寿命が削られる感覚、嫌でもわかるな)
戦うたびにライフカードが減る。
「生き延びるための戦い」が、自身の寿命を削る皮肉。
「ゼイン、油断するな」
ナヴィスが声をかける。
黒髪をかき上げながら、青い瞳を鋭く光らせた。
「……誰か来る」
ゼインは顔を上げる。
彼の視線の先、夜の街の片隅から、
一人の青年がこちらへと歩いてくるのが見えた。
🚀 シーン2:異国の碧族
「やぁ、日本の碧族は随分と賑やかみたいだね」
流暢な日本語。
だが、微かに異国のアクセントが混じる。
ゼインとナヴィスは、警戒を解かずに男を見つめた。
銀色の髪に、知的な光を湛えた青い瞳。
身に纏うのはシンプルな黒のパーカーとジーンズ、だがその姿にはどこか隙がない。
「誰だ」
ゼインが問うと、男は肩をすくめて微笑んだ。
「Jacob(ジェイコブ)さ。アメリカの碧族」
その名に、ナヴィスの眉がわずかに動く。
「アメリカの……?」
「そう、僕の故郷には“碧族の州”がある。だけどね、退屈なんだよ。
それで噂を聞いてさ、日本のヴェール・バインドはちょっと強いって」
ジェイコブはポケットに手を突っ込み、
気怠そうに、それでいて挑発的に笑った。
「なるほど、それでここまでイかれてるんだね」
🚀 シーン3:試しの一戦
「で?」
ゼインはナイフを逆手に握る。
戦闘前の静かな緊張感が、夜の空気を支配する。
「お前は何がしたい?」
「僕? うーん、せっかく来たんだから、日本の碧族がどんなものか知りたいかな」
ジェイコブは腕の刻印を見せる。
その碧色の光は、ゼインたちのものとはわずかに異なり、電子的なノイズが混じっているように見えた。
「せっかくだし——僕と試しにやり合ってみる?」
ゼインとナヴィスは一瞬、視線を交わす。
ナヴィスがニヤリと笑った。
「おいゼイン、お前のフラクタル、どこまで通じるか試してみろよ」
「……やってやろうじゃねぇか」
🚀 シーン4:閃光の応酬
「じゃあ、始めようか」
ジェイコブが指を鳴らすと、
空間に奇妙なゆらぎが走った。
(こいつ……フラクタルが速い!)
ゼインは瞬時に後方へ跳ぶ。
その直後、ゼインがいた場所に、
見えない力が走り、コンクリートを抉る。
「遅いな」
ジェイコブはすでにゼインの背後にいた。
「——《フラクタル・スナッチ》」
ゼインの体が一瞬硬直する。
まるで自分のフラクタルのコードが“奪われる”感覚。
(こいつ、フラクタルを盗んでる……!?)
ゼインは歯を食いしばり、腕の刻印を光らせた。
「——なら、奪い返すまでだ!」
「《オーバーライド》!」
ゼインの力が反転し、ジェイコブのコードに介入する。
「ほぉ……面白いね」
ジェイコブは口元を歪め、
ゼインの攻撃を回避しながら、軽やかに距離を取った。
「なるほど、確かに君の能力、なかなか興味深い」
彼は満足そうに微笑んだ。
「今日はこれくらいにしておこうか。次は本気でやろう」
そう言い残し、ジェイコブは闇の中へと姿を消した。
ゼインは拳を握りしめた。
(次は……負けねぇ)
夜の風が、静かに吹き抜けた——。