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ー神様に愛された魔法使い達を見るたびに、女手一つで魔法が使えない僕を見捨てずに育ててくれている母さんの愛情に触れるたびに、そして鏡に映るアザのない自分の顔を見るたびに思う。
ー何故自分は母さんやあの人達と一緒ではないのか、と。
「それじゃ母さん買い物に行って来るから。お留守番お願いね。」
「うん。」
「あ、誰か来たらその時は・・・」
「分かってる。その時は『ジン』に出てきてもらうから。そんなに心配しないで。」
ライムは、心配そうな顔をしている母親の背中を軽くトンと押して手をふる。
「いってらっしゃい。」
「・・・いってきます。」
母親はフッと小さく笑って手をふり返しマーチェット通りへと歩き出して行った。
母親の姿が見えなくなるまで見送ったライムは、ドアを閉めて鍵をかけた。
そして、椅子に座ってテーブルの上に開いたままの読みかけの魔法書を読み始めた。
すると、
『本当に心配症で困るよな、母さんは。』
ライムしかいない筈の室内に落ち着いた低い声が響いた。