22歳
本編軸
死ネタ
─・─・─・─・─・─・─・
「ねぇ、中也」
青暗い空にキラキラと星が瞬いた。
「私、君が好きだよ」
ついこの間まで生温く頬を舐めるだけだった風が、気づけばサラリとした軽さを持って肌の上を駆けていく。
「ずっと前から、初めて会ったあの日から、君のことが大好きなんだよ」
半壊したビル、銃弾の跡、散らばった瓦礫、転がる肉塊、この凄惨な現場を作りあげた張本人である男は、呑気にも瞳を閉じ緋色の髪を靡かせている。
「だから」
男の手を優しく握る。自分より少し小さいそれは、温度を無くしていて。まるで生の終わりを告げているかのように冷え切っていた。
「早く起きてよ」
気絶しているだけだ。そうだ、きっとそう。彼が、僕の相棒が、そう易々といなくなるもんか。
『こんなの自己暗示だ』
『早く現実を見ろ』
『本当は判ってるんだろ』
ガンガンと声が響く。事実を受け入れろ、夢を見るなと、音が脳内で反響するたび、頭が割れてしまいそうな感覚に陥る。
終焉の無い悪夢を見ているようだ。
「いつもみたいに笑ってよ」
先刻まで、普通に話していたじゃないか。僕が君に悪口を云って、君が僕に云い返す。そんなありふれたやり取りをしていただろう。なんてこと無い言葉を交わしていただけなのに、どうして君の胸に穴が空いてるの、どうして君から何の音も聞こえないの、どうして君は動かないの、
どうして君は、返事をしないの
「中也」
声をかけても返答は無い。
「中也」
声量をあげても、体を少し揺さぶっても、中也から文句の一つも飛んでこない。
「ちゅうや」
手を握っても
抱きしめても
口付けても
中也が何かを返すことは無い。
とうに事切れていることに気づいていないのか、男は縋るような震えた声で囁いた。
「おねがいだからめをあけて」
コメント
6件
性癖にぶっ刺さる、、🫶